やめ知識 やめ知識

パワハラが原因なら退職すべし!辞める前にすべきことや辞める流れ、請求できるもの解説

パワハラが原因なら退職すべし!辞める前にすべきことや辞める流れ、請求できるもの解説
この記事の監修者
新野 俊幸(「退職代行」専門家)
自身が会社を退職する際に苦しんだ経験から、日本初の退職代行サービス「EXIT」を2017年に開始。「退職で苦しむ人をなくしたい」という思いで、退職代行を日本に広め続けている。

職人の世界では1日でも早く技を身につけてもらいたい、技を習得する姿勢にしていきたいなどの理由から厳しい指導を行う場合があります。厳しい指導そのものが悪いわけではないものの、エスカレートしてしまいパワハラのような状態になってしまうことがあるので気を付けなければなりません。

当事者からすればパワハラではなく普通の指導と考える人が非常に多く、パワハラに無自覚、もしくはパワハラと指摘されて心外に思う人もいるのです。結論から言いますと、パワハラがあったら退職した方がいいのです。

本記事ではパワハラを理由に退職することを中心に、辞める前にすべきことや辞める流れなどをご紹介していきます。

この記事を読むことで、パワハラ被害を受けている方がこの先どのような対応をしていけばいいのかがわかります。ぜひ最後までご覧ください。

パワハラが原因で退職する人は年間86万人と多い

パーソル総合研究所は2022年11月、「職場のハラスメントに関する調査結果」を発表しています。この調査では実に2万8000人ほどの男女にパワハラに関する質問を行っており、その中で2021年においてハラスメントを理由に離職した方は簡易推計で86.5万人に上ることが明らかとなりました。

参照:パーソル総合研究所「パーソル総合研究所、職場のハラスメントに関する調査結果を発表」

86.5万人のうち57.3万人が「暗数化」していると言われています。暗数化とは会社にはハラスメントで辞めることが伝わっておらず、会社自体はハラスメントの認識がなかったという状態を指します。

ハラスメントで離職した方が多くいた業種をみると、トップが宿泊業・飲食サービス業で17.9万人、その次が医療・福祉で14.4万人、次に卸売業・小売業が12.6万人と続きます。この3つに共通するのは多忙になりやすく、人手不足になりやすい業種であることです。いずれにしてもハラスメントで離職する人が結構多いことが言えるでしょう。

パワハラによる退職は自己都合か会社都合か?

パワハラで会社を辞める場合、その退職は自己都合による退職となるのか、会社都合による退職となるのか、気になる方もいるのではないでしょうか。結論から言いますと、パワハラによる退職は会社都合による退職となります。

パワハラによる退職が会社都合による退職となる大きな要因として挙げられるのはパワハラの責任は会社側がとるべきという考え方です。2022年4月からパワーハラスメント防止措置が各企業で義務化されており、パワハラを行ってはならないことを周知徹底することやパワハラを行った従業員に厳しく対処することなどを定めていくことになります。

参照:厚生労働省「職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました!」

義務化されている以上はパワハラの責任の所在は明らかに会社側にあることは言うまでもありません。パワハラによる退職は間違いなく会社都合による退職となります。あとは暗数化させることなく、パワハラの事実を会社に伝え、パワハラを理由に会社を辞めることを示すことが求められます。

パワハラで退職する前にすべきこと

パワハラを理由に退職することで会社都合による退職として扱われますが、パワハラを理由に退職する前にしておくべきことがあります。

  1. 社内のコンプライアンス窓口に相談する
  2. 各都道府県の労働局に問い合わせる
  3. 有給休暇を消化する
  4. パワハラの証拠を残す
  5. 転職先も調べておく

これらは暗数化を防ぐことはもちろん、会社都合による退職として認めてもらうために立証していくために必要なことも多く含まれています。ここからはパワハラで退職する前にすべきことをご紹介します。

社内のコンプライアンス窓口に相談する

パワハラで退職する前にすべきことの1つは社内のコンプライアンス窓口に相談することです。

パワハラ防止措置義務化に伴い、会社内にコンプライアンス窓口が設置された企業も少なくありません。こうしたコンプライアンス窓口に訴えを行うのも大切なことです。コンプライアンス窓口が設置されることで、パワハラの影響がまだ小さい段階で相談できるほか、大量の離職につながる前に問題解決につなげられる可能性があります。

一方で、パワハラの加害者とされる人物も、パワハラをしている感覚が全くなく、初めて指摘されて衝撃を受けるケースもあるでしょう。事実関係を確認するほか、パワハラの当事者たちと話し合いを重ね、再発防止に備えていくことにもつながるので、コンプライアンス窓口がある場合には早急に相談することをおすすめします。

各都道府県の労働局に問い合わせる

パワハラで退職する前にすべきことの3つ目は各都道府県の労働局に問い合わせることです。

労働局は労働問題のトラブルを解決する場であり、労働問題のトラブルの相談窓口が設置されています。この相談窓口では、パワハラがどのように起きたのかその事実関係を整理しながら、相談に乗ってくれます。その上でこの先どのような対処をすればいいのか、助言や指導を行います。

パワハラを受けたので辞めてやる!という具合に勢いで退職に向けて動き始めるとスムーズに辞められない可能性が生じることもあり得ます。それを避けるためにも、各都道府県にある労働局に足を運んで相談を受けて事実関係を整理していくことも大切です。

有給休暇を消化する

パワハラに直面し退職を考慮している場合、有給休暇を利用することは重要なステップです。この休暇を取ることで、労働者は会社から距離を置き、状況を冷静に見つめ直す時間を持つことができます。

パワハラによる精神的なストレスから回復し、心身を休めることがこの期間の主な目的です。また、有給休暇中には、受けたハラスメントの事実関係を整理し、今後の対応策を検討する時間も確保できます。

このようにして、自身の状況を客観的に分析し、将来のキャリアプランや対処法について考えることが可能になります。有給休暇の消化は、パワハラに対処するための心理的な準備期間としても非常に重要であり、自身の権利を行使することで、より健全な職場環境への移行を図ることができます。

パワハラの証拠を残す

パワハラで退職する前にすべきことの4つ目はパワハラの証拠を残すことです。

パワハラの事実を証明するには証拠が必要となります。万が一会社側が自己都合による退職として処理したとしても、ハローワークに異議申し立てを行い、その際にパワハラの証拠を用意していれば会社都合による退職として扱われるべき案件であると判断してくれます。

またこの後ご紹介する慰謝料などを請求する際にもパワハラの証拠を残しておくことで裁判の際に立証しやすくなるでしょう。この先のことを考えた場合に1つでも多くパワハラの証拠を残しておくことがおすすめです。

転職先も調べておく

パワハラで退職する前にすべきことの5つ目は転職先も調べておくことです。

パワハラを理由に退職を考える際、転職先の調査は重要です。新しい職場でもパワハラが存在する可能性があるため、事前に情報を収集することが必要です。特に大企業やその傘下の企業では、口コミや評判を通じてパワハラの有無を確認しやすい傾向にあります。

中小企業では情報収集が難しい場合もありますが、可能な限り企業の文化や労働環境について調べることが望ましいです。

転職先の選定においては、パワハラのリスクを事前に把握し、より安全で快適な職場環境を選ぶことが、将来のキャリアと心身の健康にとって重要です。

パワハラで退職する際に請求できる可能性があるもの

パワハラで退職する際、単に会社都合による退職として認められるほか、請求できる可能性があるものがいくつかあります。

  1. 慰謝料・損害賠償金
  2. 未払いの給与や残業代
  3. 労災保険

パワハラを受けたことでの精神的なダメージ、また暴力という形でパワハラを受けて働けない状態になる場合もあります。その際に請求できることも考えられるでしょう。ここからはパワハラで退職する際に請求できる可能性があるものをご紹介します。

慰謝料・損害賠償金

パワハラで退職する際に請求できる可能性があるものの1つ目は慰謝料・損害賠償金です。

パワハラの慰謝料に関してはパワハラを行った当事者だけでなく、管理を怠ったとして会社側にも慰謝料請求を行うことができます。パワハラは不法行為であるため、不法行為を理由に当事者に慰謝料を請求できるほか、会社側は安全配慮義務違反などで請求が可能です。

安全配慮義務違反は従業員に対して安全と健康に関する配慮義務を怠った状態を指し、ここを理由に慰謝料請求が行えます。

未払いの給与や残業代

パワハラによる退職を検討する際、未払いの給与や残業代の請求は重要な権利行使です。

パワハラは直属の上司だけでなく、場合によっては経営者から受けることもあります。このような状況では、給与や残業代の未払いが故意に行われることもあり得ます。

退職時には、これら未払いの給与や残業代を請求することが可能です。労働者は、自身が正当に働いた対価として、これらの支払いを求める権利があります。未払いの給与や残業代を請求することで、労働者は自身の権利を守り、不当な扱いに対して適切に対処することができます。

このプロセスは、労働者が受けた不当な扱いに対する補償としても重要であり、退職後の経済的な安定にも寄与します。パワハラによる退職の際には、これらの未払い請求を行うことで、自身の権利を確実に行使することが求められるでしょう。

労災保険

パワハラで退職する際に請求できる可能性があるものの3つ目は労災保険です。

労災は仕事中や職場に向かう通勤途中においてケガや病気になった状態を指し、パワハラに関しても仕事中であれば労災の扱いとなります。具体的にはパワハラが原因でうつ病などの状態になれば労災と扱われます。

パワハラで労災として認められるには、精神疾患になる半年間においてパワハラの事実があったかどうかが大きなポイントになります。厚生労働省では「業務による心理的負荷評価表」と呼ばれるものを用意しており、これを見た上で判断を行っていきます。

参照:厚生労働省「精神障害の労災認定基準に「パワーハラスメント」を明示します」

パワハラを理由に退職する際の流れ

ここからはパワハラを理由に退職する際の流れについて詳しく解説していきます。主な流れは以下の通りです。

  1. 2週間前までに退職の意思表明をする
  2. 退職理由を伝える
  3. 退職届に記載する
  4. 保険や年金などの手続きを行う

手順①2週間前までに退職の意思表明をする

最初に行うのは2週間前までに退職の意思表明を行うことです。

明確に退職の意思を示しておくことでパワハラを理由とした退職がスムーズにいきやすくなります。法律上は2週間前に表明すれば問題なく、申し出から2週間が経過すれば辞められるので2週間後に辞める準備を進めましょう。

手順②退職理由を伝える

パワハラで退職するという事実を伝えていきましょう。冒頭でもご紹介した通り、パワハラで退職した方の多くは暗数化され、会社側がパワハラの事実に気づいていない可能性があります。

パワハラで退職したことを分かってもらうためにも、なぜ退職するのかその理由を突きつけることも大切なことです。

手順③退職届に記載する

次に行うべきことは退職届に記載することです。通常だと一身上の都合で退職する旨の内容が書かれることがありますが、パワハラで退職する場合にはパワハラ被害を受けたことを理由に退職することを記載しましょう。

会社側が受理した場合には会社都合退職として扱われるため、一身上の都合とは書かないで提出することを強くおすすめします。

手順④保険や年金などの手続きを行う

退職したら保険や年金などの手続きを行いましょう。

速やかに切り替えをしておかないと後々面倒な状態になる可能性も十分に考えられます。パワハラを理由に退職するとしても、一般的な退職の段取りと大きく変わるわけではないので速やかに行動しましょう。

パワハラが原因で退職を伝えられないなら退職代行がおすすめ

パワハラが原因で退職したいとしても、直属の上司からパワハラを受けていた場合になかなかパワハラが原因で退職したいとは言い出せないものです。そんな時におすすめなのが退職代行サービスの活用です。

退職代行サービスであれば本人に成り代わって退職の申し出を行います。パワハラを受けて退職したい場合には退職代行サービスを利用しましょう。

退職代行サービス「EXIT」