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YouTuber カジサック|「自分に向かないことは辞めた」キングコング梶原が、芸人であり続けるためにはじめた挑戦

YouTuber カジサック|「自分に向かないことは辞めた」キングコング梶原が、芸人であり続けるためにはじめた挑戦

最終更新日 2019年1月15日

「2019年、年末までに登録者数100万人に行かなかった場合、芸人を引退したいと思います」――。2018年10月1日、YouTubeにアップされた動画『YouTuberカジサック誕生!!』のなかで、YouTuber「カジサック」ことキングコングの梶原雄太さんは、そう宣言しました。

1999年のキングコング結成以来、舞台やテレビで活躍し、漫才師や芸人として評価されてきた梶原さんが、どうして未経験のYouTuberに挑戦しようと思ったのか。そして、新しい挑戦の先に何を見つめているのか――。

YouTuberカジサックとして、梶原さんが本気で取り組んでいる新しい挑戦について、お話を伺いました。

苦節6年の先にようやく見つけた、芸人であり続けるための新しい居場所

カジサック

――梶原さんがYouTuberになると知ったとき、「どうして、突然!?」と驚きました。

カジサックさん

世の中の多くの人は、僕の挑戦が突然のことのように感じるかもしれませんね。ただ、この挑戦は、僕にとって突然のことではなかったんです。2012年、レギュラーを務めていたバラエティ番組『はねるのトびら』が終了して、それから6年間は他の芸人が挑戦していないことで、自分のパフォーマンスを100%発揮できる「自分の居場所」を探し続けていました。

相方の西野亮廣が、彼なりの目標を持って活動している姿を見ながら、キングコングというコンビが世間から忘れられないためにも、僕はテレビには出続けようとしていた。ただ、今のバラエティ番組の主流になっている「ひな壇の芸人がトークをして、それをMCがイジる」という座組み(構成)は、体を張った笑いが得意な僕には向いていませんでした。背伸びをしている自分にも気づいていました。そして、「この座組みだと、どう頑張っても自分の100%は出せない」と心が折れたんです。

――ひな壇トークに向いていないと気づいたのは、いつ頃だったんですか?

カジサックさん

完全に気づいたのは、今から2、3年前くらいです。そのあとも自分の居場所を探し続けたのは、僕が腐っても芸人だったからでしょう。

自分の武器(=向いていること)をいち早く見つけることが大事なのだと思います。僕にとっての武器は、中学生のときに見つけた「お笑い」でした。それから、いろいろな出会いがあるなかで、やっぱりお笑い芸人であることが自分の武器になると思いましたし、人を笑かしたり笑われたりしたいから、「お笑い芸人をずっと続けていきたい」という気持ちがあります。

野球選手がスキルアップのために自分の技術を磨き続けているように、芸人も立ち止まったら、そこで人を笑わせるスキルは止まってしまう。「成長するためには、何か新しいことに挑戦しなければいけない」と考えて、自分の居場所を探し続けました。

――居場所が6年間見つからず、挫折しそうになりませんでしたか?

カジサックさん

居場所を探せば探すほど、下を向いてしまうときがありましたよ。でもね、下を向きかけても「漫才を頑張ろう」と思えば、また上を向くことができたんです。

僕たちキングコングは、「漫才師」という肩書で活動しています。ありがたいことに、死ぬほど忙しいときでも「劇場には出させてほしい」とお願いして、デビューしてからの19年間、大阪の「なんばグランド花月」の舞台に立たなかった月はありません。それほど、僕にとって漫才は当たり前で、自分を支えるものになっています。

ただ、「漫才師キングコング」としての居場所はあっても、ボク個人としての居場所はなかなか見つからなかった。今はようやく、自分のパフォーマンスを発揮できる「YouTuberカジサック」という居場所を見つけたのだと思っています。

新しい挑戦について誰にも相談しなかった。絶対に面白くなる自信があったから

カジサック

――YouTuberという居場所を見つけたきっかけとは?

カジサックさん

きっかけは、あるイベントで人気YouTuberさんが1000人の観客をドッと沸かせている姿を見たことです。その様子を見て、「時代は動いている。この存在を放っといたらあかん」と感じた僕は、それからの10ヵ月間、YouTuberの動画を毎日のように見続けて勉強しました。そのなかで、「ある程度知名度のある人間がYouTuberに積極的に絡んでいる動画はない」と気づいたんです。その瞬間、「俺の新しい居場所はココや!」とピンときました。

――YouTuberをはじめようと思いついたとき、誰かに相談しましたか?

カジサックさん

「やめたほうがいい」と言われたくなくて、誰にも相談せず、全部自分で決めて動きました。というのも、「これは絶対に面白いことになる」と自信があったからです。そういうとき、他人の意見は必要ありませんよね。

実は、僕がYouTuberとしての第一歩を踏み出すきっかけになった、人気YouTuberのラファエルさんやヒカルさんとのコラボ動画を作ろうとしたとき、所属している吉本興業に「これは友人として、個人的に出演したということにさせてください」とお願いしました。

――なぜですか?

カジサックさん

YouTuberとして動き出すための「種まき」がしたかったからです。大勢の視聴者の方が見てくれる人気YouTuberの動画に出て、「テレビでは見せられなかったけれど、僕はこういうお笑い芸人なんだ」ということを伝えたかった。でも、所属事務所を通した「お仕事」となるとギャラが発生するので、吉本興業に「ノーギャラでやりたいです。僕のYouTuberとしての活動は、絶対オモロイことになりますから」とプレゼンしました。そしたら吉本興業が「わかった、暴れてこい」と応援してくれた。そのおかげで、今の僕がいるんです。

自分に向いてないことは辞めようと思った。向いていないことに力を注ぐ時間はもったいない

カジサック

――YouTuberと芸人の二足のわらじを履いていると、やるべきことがたくさんありますよね。YouTuberを続けるために、何か辞めたことはありますか?

カジサックさん

「自分に向いていないことは辞めよう」と思いましたね。たとえば、今のバラエティ番組のひな壇にキングコング梶原として出演することです。

向いていないことに力を注ぐ時間がもったいないと感じるし、自分の武器を見つけたら、それを磨き続ける人間が生き残っていけると思う。向いていないことをするのは、ただの背伸びです。

ただ、YouTuberカジサックとしてならば、ひな壇に出たいと思っています。カジサックは、キングコング梶原とは違うキャラクター設定ですし、動画の宣伝にもなるからです。

――キングコング梶原さんとして、バラエティ番組にはもう出ないんですか?

カジサックさん

実は、そこがカジサックとして活動する意味につながっています。今回の活動には、でっかい夢がいくつもあるんですよ。その夢のひとつが、僕のように「体を張ったお笑い」が得意な芸人でも、パフォーマンスを100%発揮できるテレビをつくることです。わかりやすく言えば、「リアクション芸」で笑いをとるような昔のお笑いを、今の時代に合わせて見せられるテレビにしたい。

そのためにも、僕は今あるテレビの座組みをぶっ壊したいと思っています。もっといえば、ダウンタウンさんみたいに時代を変えたいんです。

――時代を変える?

カジサックさん

そうです。そもそも、今の日本のお笑いはツッコミ重視になっています。たとえば、そこで撮影をしている人がいたら「カメラ撮ってんじゃねえよ!」と突っ込んだり、誰かをいじって笑いを取ったりするんです。これはダウンタウンさんの笑いを見た人間が、そういう笑いのとり方をマネしているからで、テレビのお笑い番組も、ひな壇芸人がMCにいじられて笑いを取る形が主流になりました。ただ、その今の座組みのなかで、芸人のスターは生まれないと思っています。

カジサック

――どうしてスターが生まれないんですか?

カジサックさん

芸人がスターの番組に呼ばれて、スターに面白くされることを繰り返すからです。たとえば、知名度の低い芸人が『アメトーーク!』のひな壇に呼ばれて、MCの「雨上がり決死隊」さんにいじってもらい、その場で笑いをとったとしましょう。その番組のなかで評価された芸人は、また違うスターの番組に呼ばれて、違うスターに面白くいじってもらいます。でも、それを続けているだけでは、その芸人は永遠にスターになれません。

お笑い芸人のなかには、スターになるべき天才が大勢いるんです。テレビは「この芸人を見たいから、この番組を見る」と視聴者に思わせてくれるスターを、もっと誕生させなければいけない媒体だと思う。そのためにも、今ある座組みをぶっ壊そうとしています。

大暴れできる媒体を自分の手でつくる。芸歴19年のなかで、今が最高に楽しい

カジサック

――YouTuberになった感想を教えてください。

カジサックさん

肉体的には大変ですけど、精神的には楽しさしかないですね。YouTubeは演者としてだけじゃなく、スタッフ側にもなって、理想の番組をつくれる媒体です。僕はやっぱりテレビが大好きで、テレビに出たくてお笑い芸人を続けています。それなのに情けない話ですけど、テレビでは自分の持ち味をなかなか発揮できなかった。けれど今は、自分がつくった番組のなかで大暴れできるので、楽しさしかありません。

それにカジサックになってから、キングコングの漫才が明らかに面白くなった実感があります。それは、カジサックとして動画づくりをしてみて、「俺ってこうやったな」と感じたことを、漫才にも落とし込めるからだと思います。つまり、カジサックがキングコング梶原を成長させてくれた。

ですから、成長し続けるには、まずは自分の居場所を見つけること、そして自分に向かないことは辞めて、常に新しいことに挑戦することが必要なんだと思います。

――カジサックの部屋の登録者数は59万人(2018年12月17日現在)を超えましたよね。2019年の春頃には、宣言されていた100万人を達成しそうだと思いました。

カジサックさん

いやいや! YouTubeは、そんな甘い世界じゃないんですよ。僕は、登録数の伸びが停滞する時期は、いずれ必ず来ると思っています。

実際に、登録者が36万人から39万人に増えるまで時間がかかりました。でも、そのことを想定していたので、「停滞したら、次はこれを出そう」と次にアップロードする動画を前もって準備していたんです。停滞したとき、その動画を出してみたら、見立てが見事に当たって登録者数が一気に伸びました。今は、「次の停滞期が来る前に、次の戦略をいかに立てられるか」の戦いをしているところです。

――これからもカジサックさんの挑戦は続くんですね。最後に、何かを辞めて、新しい挑戦に踏み出す人にメッセージをお願いします!

カジサックさん

挑戦に必要なのは「準備」だと思います。僕はYouTuberカジサックを思いつきでやっているわけではなく、きちんと準備期間を用意してから挑戦をはじめています。その準備期間があったからこそ、「こうしたら、こんなふうにオモロくなるやろな」と自信を持って動画を出せるんです。それが何の準備もせずに、「面白そうだからやってみよう!」と思いつきで行動に移していたら、予想外のことが起きたとき「やっぱり自分には向いていなかった」と諦めが早くなってしまうでしょう。

今している仕事を続けながら、違う世界に飛び込みたい人は、明確な目標を立てて、違う世界のことをしばらく勉強したほうがいいと思います。目標を達成するためには、戦略を練る時間が必要です。それら全部をひっくるめて、僕は準備だと思います。挑戦したことを後悔しないようにしっかりと準備をして、成功する確率を1%でも上げてみてください。

 

梶原 雄太(かじわら・ゆうた)
1980年、大阪府生まれ。NSC(吉本総合芸能学院)22期の同期生だった西野亮廣と、1999年、漫才コンビ「キングコング」を結成。2018年10月、YouTuberカジサックとしてデビュー。
YouTubeチャンネル「カジサック KAJISAC

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