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吉沢明歩|「AV女優は天職じゃなかった」レジェンドが語る本当の引退理由

吉沢明歩|「AV女優は天職じゃなかった」レジェンドが語る本当の引退理由

最終更新日 2024年4月26日

プロとしての寿命が短いAV業界において、15年以上もトップ女優として活躍し続けてきたレジェンド、吉沢明歩さん。

人気アイドルグループ「恵比寿マスカッツ」の中心的存在でもあり、AV女優を「セクシー女優」という呼び方とともによりオープンな仕事として世に印象付けました。

そんな吉沢さんがついに2019年3月末をもってAV女優を引退することに。その裏にはどんな決意があったのでしょうか。

 

AV女優の仕事だけなら、続けられてはいなかった

吉沢明歩

照沼

もともと吉沢さんはグラビアアイドルをされていたそうですが、AV女優になるきっかけはなんだったんですか?

吉沢さん

グラビアの仕事は実際そんなに長い間やっていなくて。たくさんグラビアアイドルがいる中で自分なりの特徴を出したいと思っていたこともあり、AVをやることになったんです。

照沼

AV女優になることに不安はありませんでした?

吉沢さん

不安はあまりなかったですね。当時、早坂ひとみちゃんや小沢菜穂ちゃんがAV女優として活躍していたんですけど、彼女たちを見ていて「闇」を感じなかったというか、「楽しそうにお仕事しているな」と感じていたので。

でも1カ月くらいは真剣に悩みましたけどね(笑)。

照沼

AV女優として働いてみて、続けられそうだという手応えはありましたか?

吉沢さん

正直、AVの仕事だけだったら長くは続けられなかったと思います。再現ドラマやVシネマなど、AV以外のお仕事をいただくようになったのが大きくて。

AV女優を基盤としながらも他の仕事をしていく中で、いろんな経験値を得られることにやりがいを感じるようになったんです。

照沼

そうしたAV女優以外のお仕事で、特に楽しいと思った分野は何でしたか?

吉沢さん

撮影のお仕事はすごく好きでした。あとはVシネマなどの演技です。一本の作品を撮り終えた後の達成感がすごく大きかったですね。かけがえのない時間を共有しているという感覚があって、他のお仕事では得られないものでした。

照沼

そうやっていろんなお仕事をするようになったのは、自分の中にあったキャリアプランに沿ってのことなのでしょうか?

吉沢さん

具体的なプランはありませんでしたが、「人気者になりたい」というのはあって、自分のブランド力を高めるためにどうすればいいかを考えていました。

照沼

そういう意味では、恵比寿マスカッツは地上波テレビでの活動も含め、かなりの影響力がありましたよね。

吉沢さん

「マスカッツみたいになりたいからこの業界に入りました」っていう女優さんも増えましたしね。マスカッツの活動は「ものすごく楽しい部活」みたいな感覚でした(笑)。

なぜ15年以上続けたAV女優を引退するのか

吉沢明歩

照沼

今回の本題である「AV女優の引退」についてお聞きしたいと思います。その前に、15年以上この業界を見てきて、AV女優の代表的な引退理由にはどのようなものがあると思いますか?

吉沢さん

2つありますね。ひとつは結婚などのターニングポイントがあったとき。そしてもうひとつは、ジャンルが合わないと感じたときです。

照沼

ジャンルというのは?

吉沢さん

AV女優って長く続けていくと、いろんなジャンルの撮影を提示されるようになるんです。そのジャンルが自分に合わないと思った時点でみんなやめていきますね。

照沼

では、吉沢さんが今回AV女優の引退を決意したきっかけは?

吉沢さん

私の場合は理由がいくつかあるですが……。そもそも私はAVの作品に対して、基本的に「前のめり」くらいの気持ちでやっていたんです。台本があっても、そこに私なりのプラスアルファを付け加えようとしていました。例えば、「淫語モノ」だったら自分でたくさんアドリブを考えたり。

照沼

この役ならこういうことを言ったほうがいいだろう、的な。

吉沢さん

でもある時から、そういうのがすごく恥ずかしく思えるようになってしまったんです。

照沼

恥ずかしい?

吉沢さん

「こういうこと言ってる自分が嫌だ」とか「自分がやりたいことと違うな」とか。そういうズレを感じるようになって、「そろそろ仕事の軸を変えたほうがいいな」と思うようになったんです。

照沼

それは他にやりたいことができたということですか?

吉沢さん

いえ、そういうわけではなくて。AV女優ってサービスを提供する仕事だと思うんですけど、私は女性として根本が「サービス向き」じゃなかったのかなと思います。他の女優さんには「AV女優が天職だからずっと続けたい」とうい方もいますけど、私はそうじゃなかった。

照沼

AV女優のお仕事をやりきったからこそ気づけたのかもしれませんね。

吉沢さん

はい。そして、もうひとつの理由はさっきお話ししたジャンルの問題ですね。

照沼

どんなジャンルが問題だったのでしょうか?

吉沢さん

だんだん「陵辱モノ」が増えてきたんです。私はそういうジャンルが好きじゃないんですけど、作品として売れるからどんどん増えていく。そういうズレが生まれたのは大きかったですね。

照沼

現実にそういうことがあればそもそも犯罪ですし、強く深く人を傷つけてしまう、そういうジャンルですね。

吉沢さん

そうです。

照沼

ファンタジーとしてそういう作品の役柄を演じているけれども、自分のパーソナルな部分に入ってくる感じがあったのでしょうか?

吉沢さん

私はファンタジーだと思って演じてきたけど、現実にそういうニュースを見ると、どうしても責任を感じてしまう部分があって……。

AVで陵辱モノを演じたからといって、私が肯定してるわけじゃないんですけど、それでもつらくて。そういう、自分の中で消化できない悩みが増えてきたんです。

照沼

そうした出演作品は選べないものなのでしょうか?

吉沢さん

いえ、事前に打ち合わせをするので、どうしても嫌なことをやらされることはありません。でも、頭では想像ができていても、実際に現場に入ってたくさんの男性に囲まれて……となると、どうしてもその場で消化できない感情が生まれて。

それでつらい気持ちのままシャワー浴びに行ったりとか……。

照沼

そうだったんですか……。

吉沢さん

もちろんその撮影を行うまでに何回も打ち合わせをしているから、私自身も納得して受けた仕事なんです。周りのスタッフさんたちにも恵まれていいて、そういう作品を撮りながらもナイーブになりすぎないように気を使われていましたし。

だから、そういう気持ちは私のわがままだとは思うんですが、それでも、誰にもわかってもらえない気がして、しんどかったです。

仕事は、自分が幸せでいるためにすること

吉沢明歩

照沼

引退することに不安はありませんでしたか?

吉沢さん

不安はなかったですね。「どうにかなる」って思っていました。それに、正直もう限界で。本当に嫌になっていたんですよね。

照沼

強い決意を持っての引退である、と。

吉沢さん

そうですね、15年も続けてきたので「これだけ頑張ってきたんだから、もういいでしょ」ってくらいの気持ちで、辞めると宣言しました。

照沼

引退についてファンの方の反応はいかがでしたか?

吉沢さん

応援してくれる方のほうが多かったですね。特に長く好きでいてくれたファンの方たちは「今まで続けてくれてありがとう。最後まで応援するね」って言ってくれて。

照沼

温かいですね。

吉沢さん

私がこのAV女優の仕事を15年以上続けてこられたのには、ファンの方々の存在もかなり大きかったです。「この作品、嫌だな」とかそういう思いを引きずったまま週末を迎えても、イベントに行くとファンの方が、「会えて嬉しいです」とか「生きててよかったです」とか、ストレートに感謝の気持ちを伝えてくれる。

そういうストレートな気持ちを面と向かって言われると、つらかったことが忘れられるというか、嬉しさに変わっていくんですよね。

照沼

ではこれまでを振り返っても後悔はないですか?

吉沢さん

そうですね、つらいことはありましたけど、それ以上にやりがいが多かったですし。山あり谷ありを繰り返しながらも、あまりどん底になることはなかった15年間だったと思います。

照沼

2019年3月のAV女優引退後は、タレントとして活動される予定なのでしょうか?

吉沢さん

そうです。それと同時に美容にも興味があるので、そういった仕事もしたいと思っています。

AV女優をやってきたことが一般芸能において重しになるかもしれないという不安はありますが、事実は変わらないので、隠すつもりも否定するつもりもありません。そこはやってみないとわからないですしね。

照沼

楽しみにしています。最後にこの記事を読んでいる、退職したくてもなかなか言い出せない人たちへのメッセージをいただけないでしょうか?

吉沢さん

自分が幸せでいるために仕事に向かわないと、心は潰れてしまいます。自分が置かれている環境が苦しかったとしても、その中で小さな幸せを見つけられるなら、そこから突破口や違う入り口を見つけられるはず。だから、つらい気持ちのまま頑張るということはしてほしくないです。

照沼

逆に言えば、小さな幸せも見つけられないようだったら、むしろ辞めたほうがいい、と。

吉沢さん

無理して続けていいことなんてひとつもないと思うので。一回きりの人生だから、自分が信じることに向かうべきだと思います。

吉沢明歩

吉沢明歩
1984年、東京都生まれ。グラビアアイドルとして活動後、2003年にAV女優に。女優生命が短い業界にも関わらず15年以上トップ女優として活躍し続けてきた。アイドルグループ「恵比寿マスカッツ」の中心的存在として、地上波のテレビ番組にも出演するなど幅広く活動し、「セクシー女優」というジャンルの一般化に貢献。2019年3月末をもってAV女優を卒業する。

 

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