入社してすぐ辞めるのはあり?円満な退職理由や保険料についても紹介

石の上にも三年という言葉があるように、大学卒業後新卒で入った会社は少なくとも3年は働くべきという考えが存在します。一方で、入社後に社風などを理由にミスマッチが発覚するケースもあるため、3年も働き続けるのはきついという声も聞かれますね。
ここで気になるのは、入社して3年程度も経たずして、辞めることはありなのかどうかということです。結論から申し上げますと、入社して1〜3年ほどで辞めることはそれほど大きな問題ないと思います。
本記事では入社してすぐ辞めるのはなぜありなのかを中心に、すぐ辞める理由や円満な退職理由、すぐ辞める場合の保険のあれこれなどを解説します。
この記事を読むことで、入社後3年以内に辞めることは決して悪いことではなく、あとは事前の準備や知識を身につけておくことが大切であることがわかります。ぜひ最後までご覧ください。
【結論】入社してすぐ辞めるのは問題なし!
結論から申し上げると、入社してすぐ辞めることは問題ではありません。厚生労働省では平成31年に卒業した新卒就職者を対象にした離職状況を公表し、入社後3年以内に離職した大卒社会人は31.5%でした。(※)
※:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(平成31年3月卒業者)を公表します」
この31.5%は一見すると高く見えますが、バブル崩壊以降30%台で推移しており、31.5%という数字はごく平均的な数字となっています。
事業所規模別でみると人数が多ければ多いほど離職率は下がる傾向にあり、5人未満の事業所では55.9%となっていて、1,000人以上になると25.3%という数字で推移しており大きな差が見られます。
また、産業別でチェックすると、宿泊業・飲食サービス業が49.7%、生活関連サービス業・娯楽業が47.4%、教育・学習支援業が45.5%と高めです。これらのデータからも事業所の規模や産業の組み合わせ次第では、すぐ辞めてしまうということは決して珍しいことではないのが実情です。
上記のデータは新卒を対象にしたものですが、新卒ではなくある程度経験を積んでいる方の場合でも入社してすぐ辞めるということは珍しくないはずです。
入社してすぐに辞める理由
新卒入社で就職後3年以内離職率の高さが理解できたと思いますが、なぜ入社してすぐに辞めるのか、その理由を以下にまとめてみました。
- 人間関係が上手くいかない
- 給料が少ない
- 昇給や昇格の見込みがない
- 残業が多い
- パワハラやセクハラがある
- 仕事内容にやりがいを感じない
- 今後のキャリアに可能性を感じない
それぞれの内容について、確認しましょう。
人間関係が上手くいかない
1つ目は「人間関係が上手くいっていない」です。厚生労働省が平成30年に行った若年者雇用実態調査では、若年正社員の転職希望理由として「人間関係のよい会社に変わりたい」と答えた若者は29.9%となかなかの数字です。(※)
※(参考:厚生労働省「平成30年若年者雇用実態調査の概況~今後の職業生活~」)
会社の上司や先輩との人間関係や同僚との関係性など様々な理由から人間関係が上手くいかないことがあります。
特に新しい環境での人間関係の形成は簡単ではなく、その中でのコミュニケーションの不足や価値観の違い、職場の文化や風土との合わなさなどが原因となって、ストレスを感じることも多くなります。
ちなみに先ほどの調査では男性よりも女性の方が割合が高く、女性社員の方が人間関係で苦労しやすい傾向があるようです。
給料が少ない
2つ目は給料が少ないことです。転職しようと思う理由の中に「賃金の条件が良い会社にかわりたい」という項目がありますが、唯一過半数を超え、56.4%が転職の理由に挙げています。
※(参考:厚生労働省 平成30年若年雇用実態調査の状況)
大企業を中心にようやく初任給のアップを行う企業が増えてきましたが、現状ではまだそこまでの余裕がない企業が多く、若者の給料が少ない企業が多いのが実情です。すると、少しでも給料のいい会社、業種、職種が魅力的に映るのは無理もありません。
これまでの日本では終身雇用制度や年功序列の影響で、基本的に若手社員は給料が横並びになる時代が一般的でした。しかし、能力差があり、働きぶりもかなり異なるのに、もらえる給料がほぼ同じという状況に疑問を投げかける若者も多く、入社してすぐ辞める要因になっています。
昇給や昇格の見込みがない
3つ目は昇給や昇格の見込みがないことです。最近の若者は昇進したくないと思っている人が多く、出世を目指す若者は2割程度という調査もありますが、理由としてはあげられます。(※)
※(参考:転職サイト比較Plus「20代で出世欲がないのってどう?出世欲がない人向けの会社内でのふるまい方も解説」)
出世を望む若者の大半は、給料の増加、すなわち昇給を目的として昇進を望んでいます。彼らにとって、出世は昇給への手段となっています。そのため、昇給や昇格のチャンスが見込めない環境は、彼らのモチベーションを大きく低下させる要因となるのです。
残業が多い
4つ目は残業が多いことです。Z世代と呼ばれる若者や20〜30代は残業時間の有無を気にする傾向にあり、転職する場合も残業の有無がポイントになりやすいです。現代の若者はプライベートの時間を重視したいので、残業が多くてプライベートの時間を削ることを嫌う傾向にあります。
一方で、残業が当たり前の世代もまだまだ現役でいるため、残業を様々な形で求めるようになるでしょう。すると、若手社員からすればプライベートの時間を犠牲にさせられた気持ちが強まっていき、不満につながり、最終的に辞める選択肢を選びがちです。
若者の傾向が年々変わっていく一方で会社の体質は柔軟に変化するわけではなく、バリバリ仕事をしている人も多いため、残業の部分でミスマッチが生じやすいと言えます。
パワハラやセクハラがある
5つ目はパワハラやセクハラがあることです。2021年、厚生労働省は職場のハラスメントに関する実態調査を行っており、過去3年でハラスメントを受けたと答えた労働者の割合はパワハラで31.4%、セクハラで10.2%となっています。(※)
※:厚生労働省「職場のハラスメントに関する実態調査 主要点」
調査ではハラスメント対策に取り組んでいる企業ほどハラスメントの経験率は下がることもわかっています。あまり取り組んでいない企業は全体の6割でパワハラの経験者がいるなど、企業によってハラスメント対策の取り組みに温度差があります。
このような対策に力を入れておらず、セクハラやパワハラが頻発している企業で働く若手社員からすれば、自らも被害に遭ったり、同僚がハラスメントを受けたりする状況から抜け出したい気持ちになるのは当然と言えるでしょう。
仕事内容にやりがいを感じない
6つ目は仕事内容にやりがいを感じないことです。ベネッセ教育総合研究所が行った若者の仕事生活実態調査報告書の中で、「仕事をする上で重視すること」と「仕事の充実感」の関係という項目があり、「自分のやりたい仕事であること」を重視している人は仕事の充実感が高くなりやすい傾向にあったことがわかっています。(※)
※:ベネッセ教育総合研究所「若者の仕事生活実態調査報告書ー25~35歳の男女を対象にー」
この調査では休みが多いことや給料が高いことを重視した若者は、仕事の充実感がさほど高くないと感じている傾向にあることもわかっています。やりたい仕事ができている、やりがいのある仕事であることが仕事の充実感につながりやすいことは明らかです。
そのため、仕事内容にやりがいを感じないと仕事の充実感が足りなくなるのは致し方ないと言えます。一方でやりがいさえあれば多少給料が安くても真剣に取り組める若者も珍しくありません。やりがいを感じられない仕事だとすぐ辞めたくなる人が多いことがわかります。
今後のキャリアに可能性を感じない
7つ目は今後のキャリアに可能性を感じないことです。同じ職場にいても昇給や昇格に期待が持てない、業界的に斜陽になっていて今後の発展が見込めないなど、先行きが不透明な業種で働いている場合、せっかく入社したのにすぐ辞める人が増えていきます。
近年、高学歴の若者が官僚を目指さないことが問題になっていますが、官公庁で働いても激務の割に給料が見合わないほか、若いうちから起業して成功する若者も増え始めており、官公庁で働くメリットが感じられないために最初から回避するケースが目立っているようです。
入社してすぐに辞めるメリット
様々な要因から入社してすぐに辞める若者が多く存在しますが、入社してすぐ辞めるメリットは一体何なのでしょうか?詳しく見ていきましょう。
- すぐに辞めた人も多い
- 健康や精神的にも安定する
- 新卒、第二新卒の場合キャリアの再構築を目指せる
ここからは、それぞれのメリットについて具体的に確認しましょう。
すぐに辞めた人も多い
1つ目のメリットは、すぐに辞めた人も多いことです。冒頭でご紹介した離職率を見ても、大卒の離職率はここ30年でほとんど変わっていません。10人のうち3人は就職後3年以内に辞めているため、入社してすぐに辞めたとしても稀有な人間と思われにくいでしょう。
入社してすぐに辞める人の中には、やりたいことや夢を諦めきれずに辞める人も多いと言われています。すぐに辞めることが決してネガティブなことではなく、夢を実現させるために退路を断つ意味合いもあるため、今の時代、すぐに辞めることが必ずしも悪いことではないのです。
健康や精神的にも安定する
2つ目は健康や精神的にも安定することです。すぐ辞める人の中には様々な要因から体調を崩してしまう人も含まれています。仮に適応障害だった場合、ストレスの根源を断つことが治療につながるため、適応障害の治療のために退職した方が健康や精神の観点からも安定しやすくなります。
もちろん休職なども可能ですが、復帰するまでの労力や復帰後の周囲の状況などもあるので無理して復帰するよりも、思い切って辞めた方がいい場合も少なくありません。
新卒、第二新卒の場合キャリアの再構築を目指せる
3つ目は新卒、第二新卒の場合は、キャリアの再構築を目指しやすいということです。新卒で就職し、仮に3年以内に辞めたとしても、第二新卒というマーケットが実在し、一定のニーズが常にあります。別の企業で一定の経験をしていた若者が、第二新卒として転職市場に出ると、新卒よりも経験のある人材を求め、教育の手間を省きたい企業からすれば、魅力的に映ります。
第二新卒は特に待遇が悪いと言うこともないため、早々に見切りをつけてリスタートすることでキャリアの再構築を目指せます。入社してすぐ辞めたとしても若ければ、まだまだチャンスが多く転がっていて本人次第ではチャンスを掴めるはずです。
入社してすぐに辞めた場合の保険は?
入社してすぐに辞めた場合に、気になるのは各種保険です。
- 社会保険
- 厚生年金
- 雇用保険
上記のそれぞれの保険について詳しく解説していきます。
社会保険
1つ目の保険は社会保険です。社会人になると協会けんぽなどに加入し、保険料は会社と折半する形になります。辞める場合、任意継続で最長2年間社会保険を利用し続けられますが、保険料が全額負担となるため、収入次第では国民健康保険に切り替えた方が保険料が安くなります。
また社会保険の場合、その月で1日しか働いていなくても1か月分の保険料が請求されるため、辞めるタイミングに注意が必要です。
厚生年金
2つ目は厚生年金です。厚生年金は国民年金とは別に会社員などが利用できる年金制度であり、老後になれば国民年金と厚生年金をセットでもらえます。辞める場合、厚生年金から離脱することになり、払い続ける必要はありません。
また退職する月に既に厚生年金保険料を納め、別の会社にすぐ転職して再び厚生年金保険料を納めることになった場合は、以前の会社で支払った保険料が還付されることになります。
雇用保険
3つ目は雇用保険です。失業した場合やケガなどを負って就労不能になった場合に手当が出ます。保険料は給料で変動するほか、社会保険と違い、日割り計算で雇用保険料が決まるため、保険料だけで考えれば辞めるタイミングは気にしなくて大丈夫です。
失業手当なども雇用保険を原資にしています。ここで注目すべきは失業手当がもらえる条件です。自己都合退職の場合は離職日以前2年において被保険者期間が通算1年以上なので、1年以上雇用保険料を払い続けていないと失業手当が受け取れません。そのため、失業手当を受け取るためにも辞めるタイミングに注意が必要となります。
入社してすぐに辞める際の注意点
入社してすぐに辞めること自体は決して悪いことではありません。しかし、以下の点において注意が必要です。
- 年齢によっては転職に支障が出る
- 辞め癖を付けないようにする
ここからは、それぞれの注意点について確認しましょう。
年齢によっては転職に支障が出る
1つ目は年齢によっては転職に支障が出ることです。新卒や第二新卒であれば年齢が若いため、働き口が多く存在します。しかし、企業によっては30歳まで、35歳までと年齢で区切っていくため、年齢によってはエントリーすらさせてもらえないケースもあり得ます。
やりたい仕事を求めてすぐに辞めたのに、やりたい仕事をやろうにも年齢を理由に面接すら受けさせてもらえないことも考えられるため、その点において注意が必要です。
辞め癖を付けないようにする
2つ目は辞め癖を付けないようにすることです。転職自体はスキルアップやキャリアアップのために何回も繰り返しても問題ではなく、欧米では転職を繰り返すことが普通です。この場合に注意したいのは、スキルアップやキャリアアップを理由とした転職ではなく、人間関係などを理由に辞めるケースです。
人間関係は入ってみなければわからず、ちょっとしたことで再び仲違いを起こす可能性があります。その都度、いちいち辞めていたらキリがないのと同時に辞め癖がつき、何か嫌なことがあったらすぐに辞めてやるというマインドにさせます。これでは前向きな結果を生まないので要注意です。
入社してすぐに辞める際のQ&A
入社してすぐに辞める場合、どんなことに気を付ければいいのか、様々なケースでの振る舞いなどを解説します。
- 即日で辞めることは可能?
- 損害賠償を請求される可能性はある?
- 電話やメールで伝えるのはあり?
即日で辞めることは可能?
辞めたいと思ったその日のうちに辞めることは、条件付きで可能です。民法627条では、退職申し出をした2週間後から辞めることが可能と定められているため基本的には最低でも辞めるまでに2週間はかかります。しかし同条では、やむを得ない事由があれば契約の解除ができると定められてもいるため、このやむを得ない事由に該当すれば即日辞めることができるでしょう。なお、やむを得ない事由は肉体的もしくは精神的な病気、両親や子どもが病気になって介護が必要となったケースなどです。
また上記以外にも、残った有給休暇を消化して退職日まで出勤しないやり方や、退職日まで欠勤扱いにしてもらう方法、会社から了承を得る形で事実上、即日に近い形で退職を認めてもらうといったことが行えます。
損害賠償を請求される可能性はある?
即日で退職をする際に、損害賠償を請求される可能性は十分に考えられます。一般的にはやむを得ない事情がない限りは即日退職は難しく、退職したい日の2週間前までに辞意を伝えなければなりません。裏を返せば、退職を伝えてから退職するまでの2週間は会社で働く必要があります。
会社側が即日退職に同意すれば問題ないですが、同意しなかった場合は有給休暇の活用や欠勤扱いを認めてもらわないといけません。欠勤扱いが認められず、有給休暇も残っていなかった場合は会社に行かなければならず、無断欠勤などを横行してしまうと最悪の場合、損害賠償請求などをされる可能性だって出てきます。
電話やメールで伝えるのはあり?
会社を辞めたい場合、電話やメールで辞めることを伝えるのはルール上は問題ありません。適応障害など精神疾患を患い、人に会うのも厳しい場合や介護で片時も目が離せない場合など、どうしても職場に行けない場合に電話やメールで伝えてもさほど問題にはなりません。そもそもそのような状況であればやむを得ない事情に該当するケースも考えられるため、電話でも良いので会社に相談してみるべきです。またそのような状況になってしまったのが、会社でのパワハラなどが要因であればさらに即日退職できる可能性が高まります。
しかし、可能であれば直接会って伝えるのがいいですし、電話で伝えるにしても忙しい時間帯に電話をかけるのは職場に迷惑をかけます。直接伝えることを前提に、電話やメールで伝えざるを得ない場合は比較的仕事が落ち着きやすい時間帯を狙って連絡を取りましょう。
入社してすぐに辞めることが難しいなら退職代行の利用を!
例えばブラック企業のように辞めたくても辞めさせてもらえないケースがあります。入社してすぐに辞めることが難しい場合は退職代行サービスの活用がおすすめです。退職代行サービスは業者があなたの代わりに会社に退職したい意思を伝えてくれます。会社に退職を拒否することはできないため、辞意が伝われば退職手続きが進んでいくはずです。
「辞めたくても話し合いに応じてくれない」、「辞めるとは言いだしにくい」、「辞めようとしたら何かしらの理由をつけて強く慰留される」などの理由ですぐに辞められない場合には退職代行サービスの出番です。
就業規則が定められていても、民法の方が優先されるため、基本的には退職したい日の2週間前に退職を申し込めば2週間での退職が可能です。また、企業側が了承すればその日のうちに辞めることも可能なので、即日退職の可能性もゼロではありません。
入社してすぐに辞めたい場合、退職代行サービスを利用して後腐れなく退職し、新たなフィールドで心機一転頑張り、前向きな人生を過ごしましょう。