名前の響きに惑わされるな!本当は怖くない懲戒解雇
最終更新日 2022年12月25日
退職をする際、「すぐに辞めるなら懲戒解雇にする」等と脅されている人はいないでしょうか?
懲戒解雇というとなんだか怖いイメージがありますよね。
懲戒解雇にかかわらず、会社が従業員を解雇するには社会通念上相当と認められる理由が無ければなりません。
それでは解雇の理由が不当だと感じた場合はどのような対応を取れば良いのでしょうか?
この記事では、突然解雇を告げられた時、冷静に対処できるように労働者が知っておきたいことをご紹介します。
1.法律で定められている正当な解雇理由3種類
法律に則った正当な解雇は、大きく分けて以下の3種類です。
・普通解雇…客観的に適切な理由により、解雇する方法
・整理解雇(リストラ)…会社の事業継続のため従業員を解雇する方法
・懲戒解雇…会社の秩序を著しく乱した場合、ペナルティとして解雇する方法
1つずつ、以下で詳しくご説明します。
普通解雇とは?
普通解雇は労働契約法に基づき、以下の条件を満たした場合に行う事ができます。
・解雇することが客観的に適切である(客観的合理性)
・解雇が妥当な事案である(社会的相当性)
合理的な理由と解雇の妥当性がない場合は解雇権濫用となり、不当解雇に該当します。
以下のような理由で解雇された場合は解雇権濫用となる可能性が高いです。
・社長に嫌われた為、解雇された
・能力がないから解雇された
・妊娠したら解雇された
合理的でもなく相当性もない不当な解雇理由を言い渡された時は労働局に相談するか、弁護士事務所に連絡し、不当解雇に対する裁判を起こすことも出来ます。
労働基準法第16条引用
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
整理解雇とは?
整理解雇とは、会社の経営悪化などを理由に人員整理のため行われる解雇のこと。
いわゆるリストラです。
労働者からすると「何も悪いことをしていないのに」と不服に思ってしまう解雇方法ですが、以下の4つの条件を満たした場合、整理解雇は妥当と判断されます。
・人員削減の必要性
・被解雇者選定の合理性
・解雇手続きの相当性
・解雇回避の努力義務を満たしたか?
整理解雇は事業継続のための最終手段であり、条件は非常に厳しく設定されています。
その為、簡単に整理解雇は出来ないのです。
しかし、いち従業員が整理解雇は妥当かを判断することは難しいため、解雇が不当だと感じた時は、労働局や弁護士事務所に連絡して相談に乗って貰いましょう。
懲戒解雇とは?
懲戒解雇とは重大な就業規則違反などに対して、ペナルティとして行われる解雇方法です。
懲戒解雇が成立する例
・会社の名誉を著しく毀損する、重大な犯罪行為があった
・非常に悪質なセクハラ、悪意のあるパワハラがあった
・会社の経営を著しく阻害する、長期間・複数回にわたる無断欠勤があった
この懲戒解雇も、普通解雇と同じく「客観的合理性」と「社会的相当性」に該当している必要があります。
例えば10分ほどの遅刻や軽犯罪などは違反行為ですが、解雇されるほどではないと客観的に判断できるものであれば、不当解雇が成立する可能性はあります。
どの解雇の場合も一旦解雇を認めてしまうと、後々の裁判などで不利になりますので少しでも解雇に納得が行かない場合には絶対に解雇を認めるような発言や書面への記載はせず、すぐに労働局や弁護士事務所に相談しましょう。
解雇の手順は正当なルールに則る必要がある
解雇はルールに基づいて行われなくてはなりません。
整理解雇のような致し方ない理由だとしても、説明不足な一方的な解雇では、その従業員が不服に思うのも当然です。
解雇の際は、正当な理由とルールを労働者・使用者の双方が理解している必要があります。
解雇日と解雇理由を30日前までに告知されているか?
会社を解雇される際は、解雇日の30日前までに告知されている必要があります。
普通解雇と整理解雇においては、予告なく解雇されることは不当解雇にあたります。
労働基準法第20条引用
使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。
解雇通知書は受け取ったか
口頭だけの告知は「言った言わない」のトラブルにつながるため、解雇を言い渡された時は、解雇日と解雇理由が明記された解雇通知書を受け取る必要があります。
この解雇理由は、先ほど説明した通り客観的合理性と社会的相当性を満たしていることが必須条件です。
従業員側は、後々その解雇が不当だと感じた時、裁判の際などに提出する証拠にもなります。
正当・不当に関わらず、解雇を言い渡された時はまず解雇通知書の作成を求めましょう。
作成に応じない場合は労働基準法違反となるので労働者は労働基準監督署などに相談しましょう。
解雇が不服の場合も解雇通知書を受け取りますが、解雇を認めてはいけません。
一度でも解雇を認めてしまうと今後、不服を申し立てる際、労働者側の状況が不利になります。
解雇予告が不要となる場合
・懲戒解雇(労働者の責に帰すべき理由による解雇)
・天災事変、その他やむを得ない事由のため事業継続が不可能となった場合
以上の2つに該当する場合は、30日以内の解雇予告が不要となり、即時解雇が適用されます。
労働基準法第20条引用
天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合又は労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合においては、この限りでない。
その際、使用者は、従業員の解雇前に労働基準監督署で解雇予告除外認定を受ける必要があります。
いずれの理由や状況であっても、解雇が最も適切な方法かどうかがその解雇の正当性を判断する最重要ポイントです。
労働者と使用者双方が納得できる理由であることが一番ですが、解雇理由に納得できない場合、労働者は主に2つの方法で解雇を無効化することができます。
解雇が不服の場合にできる2つの対処法
解雇に不服を感じる場合は、以下の2つの方法で対処をすることが出来ます。
・労働局に「あっせん」をしてもらう
・弁護士を雇い不当解雇の裁判を起こす
まずは、費用がかからない労働局の「あっせん」についてご紹介します。
労働局に「あっせん」をしてもらう
解雇に対して手軽に行える対処法は、労働局にあっせんをしてもらうことです。
最寄りの労働局であっせんを手続きすることで、紛争調整委員会に話し合いの場を設けてもらうことができます。
裁判と違い費用がかからない点がメリットですが、この話し合いはあくまで任意であり、法的拘束力や強制力はありません。
会社側が話し合いに応じなくても何ら違法性はなく、手続きが無駄になる可能性もあります。
当事者同士が話し合って解決できることが理想ですが、不当解雇について争う場合、現実的には話し合いで和解が成立することはほとんどありません。
あっせんがうまくいかない場合は、不当解雇の裁判を起こす必要があります。
不当解雇の裁判を起こす
不当解雇の裁判を起こすことが、不当解雇に対する最も確実な対処法です。
強制力のないあっせんと違い、裁判には法的拘束力があります。
また、会社とのやり取りに弁護士を通すことで、会社側に「この従業員は本気だ」とプレッシャーをかけることもできます。
裁判を起こす前に和解に持ち込めることもあり、その際は裁判にかかる費用を大きく抑えることができます。
しかし裁判を起こす覚悟を決めた時は、安易に和解を期待しないほうが賢明です。
裁判は弁護士を立てなくても行う事が出来ますが、手順が分からない方は弁護士に任せた方が無難でしょう。
弁護士を雇った場合の不当解雇の裁判にかかる大まかな費用は、以下の通りです(あくまで目安です)
・法律相談料(弁護士と相談する際にかかる費用)…30分5,000円
・着手金(弁護士と契約が成立した際にかかる費用)…年収の5%前後(※)
・成功報酬金(不当解雇が認められた際の報酬)…年収の10%前後(※)
(※収入や請求金額により異なる)
上記のほか、弁護士が裁判所に出廷する際の日当や、交通費・郵便代などの実費がかかります。
裁判は長くかかるイメージもあるかもしれませんが労働審判という比較的すぐに終わるものもあるのでまずは弁護士事務所に相談に行くと良いです。
解雇扱いでもそこまで怖くない
仮に会社を解雇されてしまった場合、「職歴に傷はつくのか?」「転職先にバレるのか?」といった心配があるはずです。
まず、解雇の記録は離職票に残ります。
離職票には解雇理由が明記されているため、解雇の方法や解雇の理由が明確に分かります。
しかし、離職票は、提出を求められなければ他人に見られる心配はなく、転職の際に離職票を提出させる会社は多くありません。
提出書類に離職票がなければ、担当の面接官の目に留まることはありません。
また、解雇されたことを履歴書に記載する義務もありません。
しかし、仮に面接時に解雇をされた事があるかどうか聞かれた時に「解雇されたことはない」などと嘘をついた場合は、経歴詐称という扱いになってもおかしくないのでその場合には事実を隠さず伝えたほうが賢明です。
まとめ
従業員の解雇は、簡単な理由で行うことは出来ません。
解雇が少しでも不服だと感じた場合は
・素直に解雇に応じない
・会社に「解雇通知書」の作成を求める
・労働局や弁護士へ相談する
これらの対応が有効であるということを覚えておきましょう。
もし、本当に自分に非がある普通解雇や懲戒解雇であれば、そのことを反省し、次に進む事が大切です。
ライター:キタガワ
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