自殺に裁判、笑いごとではないブラック研修の内容と対応策

最終更新日 2021年10月22日
新入社員が会社で活躍するための準備として、研修は欠かせません。
しかし、そうした研修の中には社員の人格を否定したり、不可解なことを強要するような一見すると誰も得をしない研修、いわゆる「ブラック研修」が存在します。
ブラック研修とはどんなもので、どんな目的で行われるのでしょうか?また、実際に遭遇したときはどのように身を守ればよいのでしょうか?
ブラック研修って何?
ブラック研修とは、端的に言うと社員を会社にとって都合の良い駒として仕立て上げる研修のことです。
通常の新入社員研修であればビジネスマナーや仕事で必要な技術を教えます。
しかし、ブラック研修では社員の身体と精神を追い詰め、アイデンティティを破壊しようとします。
典型的なブラック研修はまず、合宿所のような隔離された場所に連れていき、帰りづらい状況を作ることから始まります。
最近は減ってきているようですが、携帯電話を取り上げられる例などもあるようです。
実際の研修では、社員に大声を出させたり、社員を怒鳴りながら人格を否定をするような発言をしたりします。
さらに大量の宿題を出して睡眠時間を大幅に削ることによって思考力を奪い、抵抗できなくする事もブラック研修の典型的な特徴です。
こうしたブラック研修は精神的に強くするという名目で行われますが、実際は今ある人格を破壊して、会社にとって都合のよい人格を作ることを目的として行われます。
上司の言うことは絶対に聞く社員や会社への貢献の為であれば自己犠牲が当たり前の社員といった会社側に都合の良い人物を用意するためにブラック研修は行われます。
特に新卒の社員はまだ社会経験が浅く、どんなに理不尽なことがあってもこれに耐えるのが社会人なんだと勘違いしてしまいますが、それは大きな間違いです。
このような研修を行っている会社は社員を長期的に育てていく意思がなく、過酷な労働環境で酷使し、働けなくなれば退職に追い込むという使い潰しを目的としている事が大半です。
さらに、ブラック研修を行うような会社は労働の最低条件を定めた法律である労働基準法さえも守らないことが多く、会社の法律違反をある種の脅しによって追及しにくくするという一面もあり、非常に悪質と言えます。
ブラック研修専門業者の研修で社員が自殺
現在、日本には社会人への研修を行う専門の業者があります。
なかには残念なことに先に述べたようなブラック研修を行うような業者も存在します。
社員を使い潰す会社や、労働基準法を守らない会社がこのブラック研修業者に委託してブラック研修を実施しているという訳です。
そのようなブラック研修を受けた方の中にはうつ状態になって退職し、その後働けなくなったという方や、最悪なケースとして自殺したという方もいます。
実際に、ある製薬会社に勤めていた新入社員の男性が新人研修を機に自殺したという例があります。
男性は会社の指定した宿泊施設に缶詰となって研修を受けていましたが、研修中に帰宅を命じられ、帰宅途中で自死したことが確認されています。
男性が自殺するきっかけになったのは研修内容もさることながら、研修中に吃音や過去に受けたいじめの内容を白状させられたことなども挙げられています。
研修内容に関しては詳しく公開されていませんが、同じ研修を受けた人たちからは「1日の睡眠時間は3時間ほどしかなかった」や「講師は常に命令口調で、ときにはバカヤローなど罵声を浴びせてくる」などの声があるので、ブラック研修であったのは間違いないでしょう。
男性が自殺したのが2013年のことであり「業務上の死亡だった」として労災認定されたのは2015年になってからです。
2020年11月24日、この事件について和解が成立、元講師は解決金100万円を支払いました
笑い事ではないブラック研修
一時期、テレビ番組がブラック研修をバラエティの題材にして笑い話にしたり、ブラック研修が社員の精神を強くする等ともてはやされたことがあります。
はたから見ている分には命令通りに不可解な行動をする社員は滑稽で「こんな人たちもいるんだ」と笑い話にする人もいるでしょう。
しかし、ブラック研修は自殺者も出ている重大な問題です。
その悪質さから国会でも厚生労働大臣を交えて話し合われました。
その時の内容は現在もYouTubeで閲覧できます。
ブラック研修って法律的にどうなの?
そもそもの話をするとブラック研修は労働契約法から見て違法行為にあたる可能性があります。
労働契約法には企業側が配慮すべき安全配慮義務が定められており、会社は労働者を働かせたり研修をさせたりするときは、身体的および精神的な安全も守る義務が課せられています。
ですがブラック研修では「3時間ほどしか睡眠時間がない」や「激しく罵倒される」など労働者の身体的および精神的な安全が保たれていません。
そのためブラック研修は取り締まられるべきものだと言えます。
しかし、残念ながら現在は厳しく取り締まられていないのも事実なので、ブラック研修に遭遇した本人が自分で身を守る必要があります。
ブラック研修じゃないかと思った際には以下のような対応を取りましょう。
ブラック研修の対処法
対策1 研修の内容を事前に聞く
研修の内容を聞いても説明しない会社や社内の先輩が「詳しい研修内容は伝えられないことになっている」等と言う会社はほぼ間違いなくブラック研修を行っています。
会社や先輩がそのように言うのはブラック研修業者が「研修の内容を他言しない」という誓約書を書かせている為です。
中にはいきなり「明日、研修があるから朝5時に集合して」と伝え、考える時間を与えないという手段を取る会社もあります。
その為、研修があることが分かったらすぐに上司等に研修内容を確認してみましょう。事前に回避する事が出来るかもしれません。
また、インターネットで研修内容が見れることが多いので自分の会社名+研修で検索をかけてみましょう。
対策2 研修の参加を拒否する
自分自身を守る目的で研修を受けないということも可能です。
ブラック研修であることが発覚した瞬間に帰っても問題ありませんし、会社が研修の内容について詳しく説明しない場合は「ブラック研修である可能性がある為、危険回避として研修に参加しません」と伝えて参加しなくても良いでしょう。
ブラック研修に参加してしまってからでは帰るのが一苦労です。
ブラック研修かもと思ったらまずは上司に自分の気持ちを伝えましょう。
それでも分かってもらえず、どうしてもブラック研修に参加したくないという場合には弁護士に相談して交渉してもらう事も大切です。
対策3 警察を呼ぶ
合宿所等に連れて来られてしまった後でブラック研修だと発覚し、帰りたいと思っても帰れない場合には迷わず警察を呼んで保護してもらいましょう。
山の中でも近くに人が居たり、宿泊所の管理人がいたりします。
携帯電話を取られて連絡が出来ない時や家に帰りたくても帰れない時には事情を説明し、警察を呼んでもらうと良いです。
迎えが来るまで警察署に泊めてもらう事も出来ます。
暗い山奥で、街灯がなく明らかに一人で帰れるような状況ではない場合や、帰りたいと言ったのに帰らせないと言われた等の場合は監禁罪にあたる可能性もある為、状況によっては被害届も出しましょう。
対策4 ブラック研修を辞めさせる
SNS等で「ブラック研修」について調べると「前にブラック研修を受けた先輩たちが会社と交渉してブラック研修をやめさせた」という話が散見されました。
これはブラック研修根絶にとても効果的です。
研修をこれから受けさせられる新人側ができることは多くありません。
会社内にいる人たちが内部から働きかけることでブラック研修をやめさせることが非常に大切です。
実は会社にとってもあまりメリットがないブラック研修は社員が少し怒ればすぐになくなることも多いでしょう。
外部の労働組合(ユニオン)に頼めばブラック研修根絶のための交渉やストライキを手伝ってくれます。
また、こちらの団体はブラック研修撲滅の為に動いてくれる団体で、相談や情報提供を募集しています。
ブラック研修を受けて嫌な思いをした人はぜひ会社にブラック研修を辞めるように働きかけてみましょう。
まとめ
ブラック研修は新入社員の人格を破壊して、会社にとって都合のよい人物に仕立て上げることを目的としているということを見ていきました。
ブラック研修を受ける側にとってメリットになるものはほとんどありませんし、そのような会社に今後、勤め続けても良いことが無いのは容易に想像出来るかと思います。
その為、ブラック研修が発覚した場合は参加を拒否したり、途中で帰ったり、退職することを真剣に考えた方が良いでしょう。
興味を持った方はこちらのブラック研修を放っておいてはいけないという記事もご覧ください。
ライター:キタガワ
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