退職代行の利用を検討している場合、「引き継ぎは必要なのか」気になる方も多いのではないでしょうか。
結論から言うと、退職代行を利用するしないに関わらず、引き継ぎをせずに会社を辞められます。しかし、引き継ぎなしで退職する際の注意点を把握しないまま退職代行を利用してしまうと、損害賠償請求などのトラブルが発生する可能性もあります。
そこで今回は、退職代行サービスを使った引き継ぎについて詳しく解説します。
本記事を読めば、引き継ぎなしで辞める場合のリスクを把握し、事前にトラブルを回避する方法がわかるでしょう。また後半では、引き継ぎをしたくない人におすすめの退職代行サービス5つについても解説しているので、ぜひ最後までご覧ください。
退職代行を使った場合の引き継ぎは必要?
退職代行は、業務の引き継ぎをしなくても即日で辞められるケースが多いです。そもそも退職代行を使う・使わないに関わらず、基本的に会社側は退職する従業員に対して、後任への引き継ぎ業務を強制できません。
法律では、退職の意思表示から2週間経過すれば会社を辞められると定められていますが、労働者の引き継ぎを義務化する規定は記載されていないからです。
参考:民法627条
退職の際に引き継ぎをしない場合のリスク・トラブル
退職代行を利用した場合でも、引き継ぎをせずに辞められますが、場合によっては会社とのトラブルにつながる可能性があります。引き継ぎなしで退職する場合の具体的なリスクやトラブルは、以下の通りです。
損害賠償を請求される場合がある
退職代行で引き継ぎを放棄して会社を辞めると、損害賠償を請求される可能性があります。
民法415条では、従業員が会社に損害を与え労働契約に違反するものであった場合、債務の不履行にあたり、その従業員への損害賠償請求が認められます。
参考:民法415条
退職代行を利用した人が会社から損害賠償を求められるケースの具体例は、以下の通りです。
- 退職前から長期間の無断欠勤を続けており、会社の連絡も無視している
- 引き継ぎをせずに退職した結果、会社が取引先を失う
退職代行で一方的に退職を告げ「引き継ぎを放棄」する行為は、従業員の過失とみなされ、損害賠償請求を受ける可能性があるのです。
ただ、従業員の重過失ではない限り、受けた損失は会社にも責任が問われます。「業務に引き継ぎが必要ない」「上司からパワハラを受け出勤できなかった」などの従業員の労働環境によっては、損害賠償を求められない場合もあるのです。
会社や顧客から連絡が来る可能性がある
退職代行で引き継ぎをせずに仕事を辞めると、会社や顧客から連絡が来る可能性があります。場合によっては、上司などが直接本人の家を訪問するケースや、取引先から直接連絡が来ることも考えられるでしょう。
会社や顧客が退職した本人に連絡するのは、引き留めや業務の進め方の確認などを目的とする場合が多いです。特定の業務において、本人しか知らない情報があると、直接連絡が来る可能性は高くなります。
上司から「引き継ぎをしてほしい」と協議を持ちかけられる可能性はありますが、拒否することは可能です。心理的負担が少ないのであれば、会社の要望に応え、円満退社することも候補に入れておきましょう。
懲戒処分扱いにされることがある
退職代行で引き継ぎを放棄すると、懲戒処分扱いにされる場合があります。会社の就業規則や雇用契約書によって細かい内容は異なりますが、懲戒処分を受けると、給与や退職金の減額・不支給という処分が下されるかもしれません。
基本的に「引き継ぎをしなかったから」という理由だけで、従業員に懲戒処分が下されるケースはほぼないです。
しかし、無断欠勤中に退職代行を利用した場合や、退職前から欠勤を繰り返している状況では注意が必要です。引き継ぎの放棄と無断欠勤という行為が重なれば、会社の損失も大きくなりやすいため、懲戒処分を受ける可能性が高まります。
そのため、退職代行の利用する際は欠勤を避け、就業規則の懲戒処分の条件に自分が当てはまらないか事前にチェックしておきましょう。
退職する際に引き継ぎをした方が良いケース
退職する際に引き継ぎをした方が良い具体的なケースは、以下の通りです。
会社から物品を貸与されている
会社からの貸与物がある場合は、退職する際に職場へ返却するか後任へ引き継ぐ必要があります。貸与されている物品を返却しなければ、横領罪による損害賠償請求や、情報漏洩の疑いなどのトラブルが発生するかもしれません。
返却すべき貸与品として、以下の例があげられます。
- 健康保険証
- 社員証や名刺
- 通勤用の定期券
- タブレットやPCなどの電子機器
- 業務に必要な書類やデータ
- 制服
貸与物の返却や引き継ぎは、原則退社日までに自分で郵送する必要があります。
就業規則で義務化されている
就業規則で義務化されている場合、退職時に引き継ぎが求められます。
会社の就業規則によっても異なりますが、退職金をもらう要件に引き継ぎが必要とされているケースもあります。退職金の支払いは義務ではないので、支給の可否や減額に関する要件を自由に決められます。
就業規則に定められており、引き継ぎをせずに辞めると、退職金を減額されるかもしれません。また、重要なプロジェクトを任された状況で放棄すると、有給休暇の時期をずらされ欠勤扱いになったり、退職金が支給されなかったりと、退職者にとって不利となるケースもあるでしょう。
そのため、退職代行を利用する際はあらかじめ会社の就業規則を確認しておくことが重要です。
取引先や会社に多大な損害が出る
取引先や会社に損害が出る場合、退職代行を利用した際に引き継ぎをした方が良いと言えます。従業員の不良行為によって大きな不利益を被った場合、会社はその従業員に対して損害賠償を請求可能だからです。
実際に、従業員が突然退職した際に、会社の損害賠償請求が認められた判例もあります。具体的な内容を簡単にまとめると、以下の通りです。
判決 | 突然退職した従業員が70万円の支払いを命じられた。 |
事件の概要 | ・取引先とのプロジェクトを遂行するため、従業員を採用したが、入社後すぐに退職。
・取引先との契約が解約され、会社は1,000万円の利益を失ったと主張。 ・従業員との交渉の末、200万円を支払うことで同意したが、支払われなかった。 |
裁判所の判断 | ・給与や経費を差し引けば、1,000万円の実損額にはならない。
・従業員を採用した会社にも責任・不手際があるので、200万円の約1/3にあたる70万円の遅延損害金の支払いが妥当。 |
参考:厚生労働省 退職 – 裁判例「ケイズインターナショナル事件」
基本的に、退職代行で引き継ぎをしなかっただけでは損害賠償請求を命じられることはありません。ただ、突然退職により会社へ大きな損害を与える可能性がある場合は注意が必要です。
退職をする際に引き継ぎしなくても良いケース
退職をする際に引き継ぎしなくても良い具体的なケースは、以下の通りです。
会社から引き継ぎなしの許可を得ている
会社から引き継ぎなしの了承を得ている場合、退職代行を利用しても安全に辞められる可能性が高いです。引き継ぎなしの了承を得るためにも、退職前に上司から事前に許可をもらうか、代行業者に交渉してもらいましょう。
退職代行の運営元が、弁護士や労働組合以外の「一般企業」である場合、会社と交渉できませんが、業者を通して本人の意向を伝えることはできます。制限はありますが、一般企業でも引き継ぎなしを希望する旨を伝えられるので覚えておきましょう。
引き継がなくても業務に支障がない
引き継ぎをしなくても業務が滞りなく進む場合、トラブルなく退職できる可能性が高いです。代わりが効く仕事や、自分の担当業務が一通り終わっている場合などは、本人が突然退職しても損害は小さくなります。
損害賠償請求を受けるのは、会社に大きな損害が出たケースであるため、業務に支障が出ない場合は安心して辞められるでしょう。退職代行における引き継ぎなしのリスクを回避するためにも、一通り業務を終わらせておくことが重要です。
退職代行×引き継ぎなしのリスクを回避するポイント
退職代行を利用し、業務を引き継ぎがない場合のリスクを回避するポイントは以下の通りです。
弁護士に交渉してもらう
一般的に、退職代行サービスの運営元は弁護士・労働組合・一般企業の3つです。3種類の内、会社と給与や業務に関する交渉ができるのは、弁護士と労働組合のみで、一般企業は違法行為となります。
可能な限り安全に退職したい場合は、弁護士や労働組合が運営する業者に依頼する場合が多いです。ただ、依頼費用が高くなったり、弁護士以外は交渉できる範囲に制限があったりと、それぞれの運営者にメリット・デメリットがあります。
退職代行サービスで安全に辞めたい場合は、自分の目的に合った業者を選ぶことが重要です。
非常識な辞め方はしない
退職代行の引き継ぎなしのリスクを回避するためにも、非常識な辞め方は避けましょう。具体的には、無断欠勤を繰り返した末の辞職、重要な仕事を任された状況や入社直後の突然退職などです。
モラルのない辞め方で会社に大きな損失を与える場合は、損害賠償請求などのトラブルが起きる可能性が高まります。
引き継ぎが必要ない状態まで仕事を終わらせたり、後任が自分の業務を1人で担当できるよう育てたりと、可能な限り迷惑がかからないように退職代行を利用すれば、トラブルが起きにくくなるでしょう。
簡易的な引き継ぎ書を作成しておく
退職代行を利用する際は、簡易的な引き継ぎ書を作成しておきましょう。引き継ぎ書を作成していれば、会社からの連絡や損害賠償請求などのトラブルが起こる可能性が低くなります。
一般的な引き継ぎ書に必要な項目は、以下の通りです。
1.担当業務の概要や目的
2.各業務の優先順位
3.対応中の業務における進行状況
4.トラブルへの対応やリスクを防ぐ方法
5.業務に関する書類や資料の保管について
退職代行で起こり得るリスクを抑えるためにも、簡易的でも良いので引き継ぎ書を作成しておきましょう。
引き継ぎをしたくない人におすすめの退職代行サービス5つ
引き継ぎをしたくない人におすすめの退職代行サービスとして、以下の5つがあげられます。
EXIT
EXITは、毎年1万人以上の退職をサポートしており、「業界実績No.1」「業界最安値2万円」を誇る退職代行サービスです。弁護士監修のサービスであり、引き継ぎなしの要望を伝えたいなど、あらゆるケースに対して対応できます。
公式:退職代行EXIT
辞めるんです
辞めるんですは、一般企業の退職代行サービスです。顧問弁護士からの業務指導を元に、法律に抵触しない適切な業務範囲でサポートを行い、実績件数は約7,000件を誇ります。
退職代行Jobs
退職代行Jobsは、労働組合が運営するサービスです。組合費2,000円を支払うことで、引き継ぎなどの業務や給与に関する交渉を行えます。
退職代行ガーディアン
退職代行ガーディアンは、労働組合が運営するサービスです。料金は一律29,800円で、引き継ぎ業務や給与に関する交渉を行えます。
弁護士法人フォーゲル綜合法律事務所
フォーゲル綜合法律事務所は、弁護士に退職代行を依頼できます。料金は33,000〜110,000円で、引き継ぎを含めた交渉や訴訟にも対応することが可能です。
退職代行サービスは引き継ぎのサポートを受けよう!
今回は、退職代行で辞めても引き継ぎが必須ではないことや、起こり得るトラブル、リスクを回避する方法について詳しくご紹介しました。
退職代行を利用する・利用しないに関わらず、引き継ぎが強制されることはありません。一方、引き継ぎをしないことで会社に大きな損失が出る場合は、損害賠償請求を受けるなどのリスクもあります。
退職代行の利用で可能な限りリスクを回避するためにも、引き継ぎ書を作成しておくなどの対策を行いましょう。
EXITは、業界No.1の実績と料金価格で退職サポートを行います。弁護士指導により、引き継ぎをせずに辞めたいなどのあらゆるケースに対応し、トラブルなく即日退職できるよう社員への教育を徹底しています。
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