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傷病手当金はもらわない方がいいって本当?誤解の理由や受給条件、メリット・デメリットまでご紹介!

傷病手当金はもらわない方がいいって本当?誤解の理由や受給条件、メリット・デメリットまでご紹介!
この記事の監修者
新野 俊幸(「退職代行」専門家)
自身が会社を退職する際に苦しんだ経験から、日本初の退職代行サービス「EXIT」を2017年に開始。「退職で苦しむ人をなくしたい」という思いで、退職代行を日本に広め続けている。

病気になる、もしくはケガを負うなどして働けなくなってしまう方がいます。そんな方たちをサポートするためにあるのが傷病手当金です。傷病手当金をもらうことでしっかりと休んで治療に専念できます。

一方、傷病手当金はもらわない方がいいと主張する人もいます。その主張は本当なのかと気になっている方もいるはずです。なぜそのような誤解をするのか、不思議に思う方もいるのではないでしょうか。

本記事では傷病手当金はもらわない方がいいというのは誤解であることを中心に、受給するメリットやデメリットなどをご紹介します。

本記事を読むことで傷病手当金をもらわない方がいいという考えが誤解であることが分かります。

傷病手当金はもらわない方がいいというのは誤解!

傷病手当金はもらわない方がいいという考えは一部で出ていますが、結論から言いますと、それは誤解です。誤解の理由をまとめました。

  • 支給日のカウント方法が変わって改善された
  • 有給休暇よりもたくさんもらえる
  • 空白期間などは治療には欠かせない

傷病手当金そのものへの誤解や有給休暇の方がいいのではないかという認識の違いなどが要因と言えるでしょう。ここからは誤解の理由について解説します。

支給日のカウント方法が変わって改善された

傷病手当金をもらわない方がいいと誤解される理由として、支給日のカウント方法がありました。

実は少し前まで傷病手当金を受け取り始めてから最長1年6か月までしか受け取れず、その間職場復帰をして傷病手当金を受け取っていない期間も支給期間に入っていました。ですので、途中で職場復帰をしている時期があればその間は受け取れないので、1年6か月丸々受け取れる制度ではなかったのです。

傷病手当金の制度の不備とも言える話であり、それもあって傷病手当金はもらわない方がいいという考えにつながりやすかったと言えます。しかし、法律が改正され、支給期間のみをカウントし、1年6か月丸々受け取ることができるようになりました。

有給休暇よりもたくさんもらえる

傷病手当金はもらわない方がいいという誤解には、有給休暇を取得した方がいいのではないかという考えもありました。

確かに有給休暇であれば休んだ期間においても給与が丸々支払われるほか、傷病手当金の場合は給与の3分の2程度しか受け取れないため、明らかに有給休暇の方が多くもらえます。そのため、数日程度の休みであれば有給休暇の方がいいでしょう。

しかし、傷病手当金は長期の治療を余儀なくされるケースなどを想定しており、有給休暇だけでは限界があります。有給休暇は最大40日までしか確保できないため、2か月3か月の休みが必要な場合に大変です。長期間の休養を余儀なくされる場合は傷病手当金の方が確実にもらえるでしょう。

空白期間などは治療には欠かせない

傷病手当金をもらわない方がいいと考える人の中には、あまりにも休み過ぎると空白期間がその分長くなり、仕事への意欲などがなくなってしまうのではないかという誤解も含まれています。

仕事もせずに休んでいるだけでお金をもらうことに対し、それでいいのか?と疑問に思う人もいるでしょうが、治療に専念することがまずは大事であり、傷病手当金はいわばセーフティーネット、保険のようなものです。治療に専念するためにも傷病手当金は必要であり、受け取れるものは受け取った方がいいでしょう。

傷病手当金はもらわない方がいいと考える前にまずは受給条件の確認を

傷病手当金はもらわない方がいいと考えるまえに、まずは傷病手当金はどうすれば受け取れるのか、受給条件の確認を行っていきましょう。

  • 仕事外の病気やケガで治療中である
  • 病気やケガの影響で仕事ができない
  • 連続3日の待期期間を含んだ4日以上の労務不能状態
  • 休職中に給与の支払いがないもしくは一部

それぞれの受給条件について確認していきます。

仕事外の病気やケガで治療中である

傷病手当金の受給条件1つ目は仕事外の病気やケガで治療中であることです。

例えば、プライベートでケガをしてしまう、もしくは仕事以外のところで何かしらの精神疾患になってしまうという場合に傷病手当金を受け取ることができます。では、仕事中の病気やケガの場合はどうなるかですが、この場合は労働災害保険が適用されます。

裏を返せば、どのような理由であったとしても病気やケガになれば健康保険もしくは労働災害保険のいずれかでカバーできることになります。

病気やケガの影響で仕事ができない

傷病手当金の受給条件2つ目は病気やケガの影響で仕事ができないことです。

仕事ができない状態を「労務不能」と言いますが、病気やケガが原因で労務不能の状態になれば傷病手当金を受け取る要件をクリアします。

近年だと新型コロナウイルスで大騒ぎになっていますが、新型コロナウイルスやインフルエンザなどに感染した場合も労務不能状態となり、傷病手当金を受け取る要件の1つを満たすことになります。

連続3日の待期期間を含んだ4日以上の労務不能状態

傷病手当金の受給条件3つ目は連続3日の待期期間を含んだ4日以上の労務不能状態であることです。

病気やケガで働けない状態が一定期間続くことで傷病手当金を受け取ることができます。最低でも3日連続で休んで待期期間を過ごし、4日目以降のお休みから傷病手当金の対象です。

そのため、職場復帰を果たし出勤したら、再び3日連続で休んでから4日目以降に受け取ることになります。

休職中に給与の支払いがないもしくは一部

傷病手当金の受給条件4つ目は休職中に給与の支払いがないもしくは一部であることです。

傷病手当金のルールとして、休職中に傷病手当金を上回るような給与の支払いがあれば、傷病手当金は支給されないルールがあります。そのため、休職中に給与の支払いがない、もしくは一部にとどまっていれば受け取ることが可能です。

ちなみに給与の一部を受け取っている場合は本来受け取れる傷病手当金の中から会社から受け取った分だけを減額して支給されます。

申請プロセスの詳細について

傷病手当金を受け取るためには、上記に挙げた一定の条件を満たす必要があります。

まず、病気やけがで働けなくなった場合、健康保険に加入している期間中であることが必須です。申請には、医師の診断書と共に、健康保険組合が指定する申請書の提出が求められます。診断書には、病名、治療期間、就労不能の程度が明記されている必要があり、これに基づいて組合は支給の可否を決定します。

このプロセスは、症状や治療の進行に応じて複数回行う必要があり、一般的には申請から1~2ヶ月後に支給が開始されます。この複雑なプロセスを理解し、適切に準備することが、スムーズな手続きの鍵となります。

生命保険やその他の保険との関連性

傷病手当金の受給は、生命保険や所得補償保険の受給条件に影響を与える可能性があります。

特定の保険ポリシーでは、傷病手当金の受給が保険金の支払い条件に組み込まれていることがあるため、傷病手当金を受給する前に保険契約を確認することが重要です。また、傷病手当金を受給することで、保険会社からの補償金額が減少するケースもあります。

これらの複雑な相互作用を理解し、保険の専門家と相談することで、個々の状況に最適な選択が可能になります。

傷病手当金受給の心理的・社会的影響

傷病手当金を受給することは、受給者に心理的な影響を及ぼすことがあります。

一部の人々は、手当金の受給を「自立の欠如」と感じたり、職場に対して「負い目」を感じることがあります。また、社会的な側面では、傷病手当金を受給することによる「レッテル」や、職場復帰後の扱いに関する懸念が生じることもあります。

これらの心理的、社会的な側面を理解し、必要に応じてカウンセリングやサポートを受けることで、受給者はより健全な状態での回復を目指すことができます。

傷病手当金をもらわない方がいいと信じたくなる受給した場合のデメリット

傷病手当金はもらわない方がいいというのは明らかな誤解ですが、一方で、傷病手当金をもらうことで生じるデメリットもいくつかあります。

  • 休職中も会社とのやり取りがある
  • 休職中も社会保険料や住民税の支払いがある
  • 復職後再び同じ病気になっても受給できないことも
  • 生命保険に加入できない可能性がある
  • 他の給付金や保険金の受給条件に影響が出る可能性

金銭的なデメリットもあれば、制度に関するデメリットなどもあり、この部分だけを見れば傷病手当金をもらわない方がいいのではないかと感じる人がいるのも不思議ではありません。ここからはそれぞれのデメリットについてご紹介します。

休職中も会社とのやり取りがある

受給した場合のデメリットの1つ目は休職中も会社とのやり取りがある点です。

傷病手当金は1度受け取り始めたら何の手続きもなく受け取り続けられるものではありません。定期的に医師の診察を受けて手続きを行い続ける必要があるためです。そのたびに会社とのやり取りが必要になり、連絡が入る場合もあります。

特に精神疾患で休んでいる場合には会社とのやり取りすら面倒に感じる人も多いはずです。やり取りのたびに今の状況を聞かれ、焦りを感じる人も出てきます。会社とのやり取りがどうしても出てきてしまうのはデメリットと言えるでしょう。

休職中も社会保険料や住民税の支払いがある

受給した場合のデメリットの2つ目は休職中も社会保険料や住民税の支払いがある点です。

傷病手当金を受け取っている最中も社会保険料は支払わないといけませんし、住民税なども支払うことになります。傷病手当金は非課税のため、所得としては扱われません。しかし、住民税は前年の所得に応じて決められているため、傷病手当金を受け取っていたとしても、関係なく支払い義務が生じます。

しかも、傷病手当金は給与の3分の2しか出ないので、その中で社会保険料や住民税の支払いをしないといけません。手元に残るお金が少なくなってしまうことから、傷病手当金を受け取ってもセーフティーネットとして十分かと言えば、そうとは言い切れない部分と言えます。

復職後再び同じ病気になっても受給できないことも

受給した場合のデメリットの3つ目は、復職後再び同じ病気になっても受給できないこともある点です。

例えば、長らく精神疾患にかかっていたものの、何とか職場に戻ろうと頑張ってやっと復職したとします。しかし、無理をし過ぎたことで再び同じ病気になってしまった場合、既に前の病気で1年6か月にわたって傷病手当金を受け取っていた場合には再度受け取ることができません。

別の病気になった場合は再び受け取ることができますが、同じ病気になると受け取れないルールになっています。

生命保険に加入できない可能性がある

受給した場合のデメリットの4つ目は、生命保険に加入できない可能性がある点です。

例えば精神疾患になり、傷病手当金を受け取っている最中に生命保険に加入する場合、保険によっては加入時に健康状態の告知をすることになります。その際に精神疾患になっていることを理由に契約をしてくれない可能性が考えられます。

もちろん精神疾患でも生命保険に加入できる可能性もあるため、加入できないのはあくまでも可能性レベルですが、少なくとも保険会社としては慎重にならざるを得ません。傷病手当金を受け取る人全員が注意すべきことではありませんが、精神疾患を発症した方だと加入できる生命保険に限りが出てくるかもしれません。

他の給付金や保険金の受給条件に影響が出る可能性

傷病手当金を受け取らない方が良い場合には、他の給付金や保険金の受給条件に影響が出る可能性があります。

例えば、特定の生命保険や所得補償保険では、傷病手当金の受給が保険金の支払い条件に影響を及ぼすことがあります。このため、傷病手当金を申請する前に、保険契約の詳細を確認し、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることが重要です。

傷病手当金をもらわない方がいいとは思えなくなる受給した場合のメリット

一方で、傷病手当金を受け取った方が断然いいと思えてくれるようなメリットも豊富にあります。

  • 治療に専念できる
  • 収入面で不安にならずに済む
  • 長い休みの中で将来のことを決められる

やはりセーフティーネットとしての機能はあまりにも大きく、しっかりと治療に専念できることは何よりも大きいことと言えるでしょう。ここからは傷病手当金を受け取った方がいい理由についてご紹介します。

治療に専念できる

受給した場合のメリットの1つ目は治療に専念できることです。

少なくとも1年6か月の間は傷病手当金を受け取ることができるため、その間は治療に専念できます。重い精神疾患で回復が厳しそうな場合には精神障害などの方策もあるため、いずれにしても1年6か月の間で何らかの判断を下すことができます。

休職中はこのままで大丈夫だろうかと不安になりがちですが、1年6か月は傷病手当金を受け取り続けられるので安心して休み続けることが可能です。

収入面で不安にならずに済む

受給した場合のメリットの2つ目は収入面で不安にならずに済む点です。

休んでいる間は給与が全く発生しないので、収入面で不安になるのは当然です。傷病手当金としては給料の3分の2しか受け取れないものの、少なくとも最低限の生活を過ごせるだけのお金は得られます。貯金などをしていれば少しだけ切り崩して対応することもできるので、負担をある程度まで抑えられます。

社会保険料や住民税の支払いこそありますが、傷病手当金自体は非課税なので翌年度は所得が低く、場合によっては社会保険料や住民税の支払いが軽くなるでしょう。何より収入面を気にしなくて済むのはかなり大きな要素と言えます。

長い休みの中で将来のことを決められる

受給した場合のメリットの3つ目は長い休みの中で将来のことを決められる点です。

仕事をしている間は目の前の仕事に集中するため、なかなか将来のことを考える余裕がありません。また余裕がなくなっている状況だと視野がどうしても狭くなり、早まった判断をし、その場の勢いで退職まで考えてしまう人も出てきます。

冷静な判断を下すには、しっかりとした休養を行った上で余裕のある状況で考えていくことが求められます。傷病手当金を受け取っている間に休養を十分にとって、冷静に考えられる状態になってから職場復帰を目指すのか、それとも退職するかの判断を下しましょう。

仮に退職する際には転職先をどこにするか、次はどんな仕事をしたいのかまで考えていくと前向きに取り組めるようになります。

傷病手当金をもらわない方がいいと決断しても退職後にもらえることも

ネット上で、傷病手当金をもらわない方がいいと書いてあり、それを信じて傷病手当金はもらわない決断を下した人もいるのではないでしょうか。その後退職した際に、やっぱり傷病手当金を受け取っておけばよかったと後悔した人もいるはずです。実は退職してからも傷病手当金を受け取ることは可能です。

これにはいくつかの条件があります。その条件は以下の通りです。

  1. 退職日までに1年以上健康保険に加入し続けていた
  2. 退職の時点で傷病手当金を受け取れる要件を満たしていた
  3. 退職日に出勤をしていなかった

これらの条件を満たしていた方は退職後も傷病手当金を受け取ることが可能です。1~3の中で最も注意すべきなのは3の「退職日に出勤をしていなかった」という部分です。その理由は、退職日=最終出勤日となるため、無理を押して出勤し、周囲の人たちに挨拶する人もいるからで、この場合は出勤として扱われる可能性があります。

出勤として扱われたら傷病手当金を受け取れる条件を満たすことができなくなり、退職後の受給は不可能となります。出勤として扱われないようにするには全く仕事をしないことが第一です。仮に退職の際に引継ぎが必要になっても退職日以前に終わらせて最終出勤日は有給休暇を取得する、もしくは欠勤にするなどの対策が求められます。

退職後も受け取り続ける際の注意点はその程度ですが、できれば在職中に受け取り始めておくのが確実です。在職中に受け取っておけば退職日以降も普通に傷病手当金を受け取ることは可能です。住民税の支払いに関しても年4回ではなく毎月支払うような形にしてもらって対応するといったことも必要でしょう。

傷病手当金をもらわない方がいいと思っても退職代行サービスで相談してみよう!

傷病手当金はもらわない方がいいというのは明らかな誤解であることは間違いありません。特に法改正もあり、1年6か月丸々傷病手当金を受け取れるようになったので、途中で職場復帰して再び休むことになっても再度受け取ることができます。できる限り無理をしない形で過ごせるようにするには傷病手当金は欠かせません。

もしも退職まで視野に入れて検討したい場合には退職代行サービスに相談して、話を聞いてもらうのもいいでしょう。退職後に傷病手当金を受け取る場合でも出勤しないで退職日を迎えられるので安心です。出社しないで辞めたいと思っている人は退職代行サービスの活用を検討してみてはいかがでしょうか。

退職代行サービス「EXIT」