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西野亮廣|辞められないのは対等じゃないから。対等でいるために必要なこと

西野亮廣|辞められないのは対等じゃないから。対等でいるために必要なこと

お笑いコンビ・キングコングとして日々ステージに立つ一方で、絵本作家としても人気作品を生み出し、日本最大のオンラインサロンまで運営している西野亮廣さん。他にもWebサービスの立ち上げなど、彼の挑戦は枚挙に暇がありません。

しかし新しい挑戦のためには、何かを「辞めること」も必要。芸人引退や絵本作家引退などの発言で度々世間を賑わせている西野さんは、「辞めること」をどのように考えているのでしょうか。

(インタビュアー:和久井香菜子)

CIOを3日で辞めるのは「無責任」なのか

西野亮廣

和久井

西野さんは、これまでにいろんなチャレンジをされていますよね。逆に何かを辞めたことはありますか?

西野さん

僕、結構辞めてるんです。テレビとか、ひな壇、グルメ番組、情報番組、クイズ番組、Webサービスも黒字になったら辞めてますね。

こないだCIOも3日で辞めました。結構辞めがちです。

和久井

CIO退任についてはニュースで拝見しました。当時のお話を伺えますか?

西野さん

代表の方と飲んでいたときに「CIOに就任してもらえないですか」って言われて、気軽に引き受けたんですよ。そしたら社外監査役の方がその件をニュースで見て「え、西野が入ったのかよ、大変そうだな」みたいなことをTwitterでつぶやかれていたんです。

和久井

それは嫌な気分になりますね。

西野さん

半分ギャグなんですよ。ギャグだけれど、面識もなければ、信頼関係もない方からのイジリはシンプルに失礼だなって思って。「僕、一応頼まれたんですけど」ってその方に言ったんですけど、「社外取締役っていうのはこういう役目で……」という役割論を展開されて。

「そうじゃなくて、まず人として失礼じゃないですか?」っていうことを申し上げたんですけど、同じ返事を繰り返してきました。話にならないなと思ったんで、最後に「ここであなたが頭下げないと辞めますよ」って言ったんですよ。それでもどうのこうの言ってきたんで「じゃあ辞めます」って3日で辞めました。

和久井

結果的に「3日で辞めた」ということだけが取り上げられて、NewsPicksなどでも辛辣なコメントが多くなったわけですね。

西野さん

そのコメントをしていたのが、だいたい経営者なんですよ。「3日で辞めるなんて無責任だ」みたいなコメント見たときに、「あ、そりゃ、自殺する人いるな」って思いました。

和久井

どういうことですか?

西野さん

3日で辞めちゃうと攻撃される文化って結構キツイと思います。僕はもうその人たちと関係がないので、どんだけ言われても知らねえって思えるんですけど。

でも会社に所属してて、肌が合わないって絶対にあるじゃないですか。そのときにドロップアウトしちゃうと、叩かれるって……。

和久井

どうしてそういうことが起こるのでしょうか。

西野さん

それをオッケーにしてしまうと優秀な人材が逃げていくから、カジュアルに退職されないように、求心力のない無能な経営者が「無責任だ」みたいなことを言い出すんですよ。そうしないと会社が潰れちゃうから。

ブラック企業っていうのは1社で作ってるわけじゃなくて、社会全体で作ってるんだなって思いましたね。

ただ一点。会社は新人教育にはコストをかけてくれているので、そこに対する恩は忘れちゃダメだと思いますけどね。

辞められる状態を作れば、対等な立場に立てる

西野亮廣

和久井

「辞めることは悪だ」と感じている人が、考え方を変えるためにはどうすればいいのでしょうか。

西野さん

雰囲気ですよね。やりたくないことを我慢してやってることはダサいっていう雰囲気を作ってしまえばいい。芸人でもあるんですよね。「客いじり」はウケるけどダサい。だからやらない、とか。「ダサい」って理屈超えますよね。

和久井

確かに今は我慢することが美徳みたいな雰囲気がありますもんね。

西野さん

あとは何だろう……企業の平均寿命って30年くらい? もっと低いですかね? やめようと思ってなくても、会社ごと終わっちゃうんで、「その前提で生きてたほうがいいよ」って感じですね。

和久井

辞められる状態を作っておく必要がある、と。

西野さん

そうすると会社でも強く出られるので。交渉もできるし、合わないと思ったら辞めればいいし。

和久井

CIOを辞められたときも、対等な立場だったから周りを気にせずに辞められたのでしょうか。

西野さん

そうですね。僕、対テレビ局でもそうだし、対吉本興業もそうだし、対出版社もそうだし、基本的にイーブンですね。

マウント取ってきたら、すぐ辞めるっていうのは決めています。辞めてもなんとかなるので。

和久井

仮にめちゃくちゃ怖い上司がいたら、西野さんならどういう言い方をして辞めますか?

西野さん

飲みに行きますね。飲みに行って、お酒で潰して、クリンチですね。「どうっすか? もう辞めますけど」って言いながらクリンチするっていう古典的な方法ですね、僕は。

地盤沈下する階段から脱出するために必要なのは「情報収集」

西野亮廣

和久井

西野さんは「辞められる状態」のために何を準備されてるんですか?

西野さん

情報じゃないですか。情報を仕入れておかないと、次を始めるに始められないので。

和久井

情報収集というのは具体的には?

西野さん

いろんな人と会って、いろんな話を聞いて、なるべく人を入れ替える。場所を変えたりだとか立ち位置変えたりとかすると、勝手に入ってくる情報変わるじゃないですか。

和久井

では、いつでも辞められる状態にある西野さんは、どのようなときに「辞めよう」と考えるのでしょうか。

西野さん

時間がないと新しいこと始められないので。当たり前の話ですけど、辞めないと始められないんですよね。まずは1週間暇にしないと(笑)。

スケジュールとして最悪なのは、ルーティーンの仕事で、月曜日から日曜日まで全部埋まってるっていう状態。超売れっ子タレントになってしまったら、新しい情報が入ってこないんです。僕も「年に一度は何か辞めよう」っていうのはルールとして決めてますね。

和久井

順番としては「辞めて」から「始める」なんですね。辞めるかどうかの基準はどのように判断すれば良いのでしょうか。

西野さん

貿易みたいなことをしないと自国のものがどれくらい価値があるかなんてわかんないじゃないですか。外とやり取りしないと麻痺ってくるんで、「うちの業界伸び悩んでるな」っていうふうにちょっとでも匂ったら、外の人と交流して、「どう映ってる?」みたいなことを聞いてみる。

「階段上ってるつもりだけど、地盤沈下してるぞ」みたいなことが結構平気であるんで。どの業界も。そのときが辞め時かもしれないですね。見えたら絶対やめると思うんですよ、沈んでるとこ見えたら。

和久井

なるほど。外から情報を仕入れることで、いつでも辞められる状態になり、相手と対等な関係になれる。そして、今の自分の状況を客観的に把握することもできるということですね。

西野さん

情報を仕入れないとやばいですね。辞める辞めないの前の話で、入れとかないと。今は情報仕入れようと思ったらいくらでも仕入れられるんで。とりあえずホリエモンの本読むのがいいと思います(笑)。すぐに「辞めろっ」て言うので。

 

西野亮廣
1980年兵庫県生まれ。お笑いコンビ・キングコングのツッコミ担当。作家としても活動しており、著書に絵本『Dr.インクの星空キネマ』『ジップ&キャンディ ロボットたちのクリスマス』『オルゴールワールド』『えんとつ町のプペル』、小説『グッド・コマーシャル』、ビジネス書『魔法のコンパス』『革命のファンファーレ 現代のお金と広告』『新世界』がある。また、日本最大規模のオンラインサロンも運営している。

オンラインサロン「西野亮廣エンタメ研究所」
西野亮廣氏が主宰する国内最大の会員制オンラインサロンで、毎日、西野氏とサロンメンバーで議論や実験を繰り返しながら、作品制作やWebサービスの開発などを進めている。エンタメの最前線を楽しめるだけでなく、時にはクリエイター側として参加できるのも特徴。月額1,000円の有料制ながら、会員数は23,000名を突破し、国内最大となっている。
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