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退職前に全部使いたい!有給休暇の知識

退職前に全部使いたい!有給休暇の知識

最終更新日 2022年12月26日

近年、ひとつの会社に長く勤めるのではなく数年でその会社を退職するという選択をとる人が多くなりました。
退職の仕方も多様化してきており、最近では退職代行サービスを使って会社の人と一度も会わずに退職するという方もいます。
退職の仕方やタイミングは様々ですが、いずれにせよ気になるのが退職時の有給休暇の消化です。
残っている有給休暇を全て消化してから退職したいという方は多いと思いますが、全て消化する事は可能なのでしょうか。
また、有給が認められないというケースはあり得るのでしょうか。
そこで、今回は退職時の有給の消化についてご紹介します。

目次
①有給休暇とは
②有給がどれだけ残っているか確認してみよう
③会社が退職後の有給取得を拒否する例
④有給取得を拒否されてしまったら
⑤有給取得に希望の光! 働き方改革により有給取得の義務化へ

①有給休暇とは


まず、「有給休暇」とはどのような制度なのかについて知っておきましょう。
有給休暇とは、本来仕事をする義務のある日の労働を免除するもので、休暇を取った日でも通常通りの賃金を支払われる制度のことです。
社会人をしていると体調不良になる日があったり仕事の日に予定が入ったりと様々な事が起こります。
そんな日に休みを確保できる有給休暇制度は、労働する側にとってはありがたい制度でもあります。
そんな有給休暇ですが、取得には注意も必要です。

【知っておきたいこと】
1.労働義務のない日(所定休日、退職日後など)には有給休暇をとることはできません。
2.有給休暇は次の要件を満たした場合に与えられると定められています。
「労働者が6ヵ月以上継続勤務し、かつ全労働日の8割以上出勤したときに当然生じる(労働基準法39条)もので、労働者の請求を待って初めて生じるものではありません」
これはパートや期間雇用の場合であっても該当するので、頭に入れておきましょう。

②有給がどれだけ残っているか確認してみよう


①で解説した通り、有給休暇は在職中しか使用できないので退職前に有給休暇を全て消化するためには有給日数、公休日数を加味して退職日を設定する必要があります。
退職日までに有給日数分の期間を設ける事はもちろん、有給を消化している間にある公休日には有給休暇を充てる事が出来ないため、公休日の日数分も退職日を先に延ばす必要があります。
まずは、有給休暇がどれだけ残っているか把握するために、以下の計算表を使って確認してみましょう。

正社員の付与日数(週所定労働日数が週30時間以上または週5日以上の労働者)

アルバイトの付与日数(週所定労働日数が4日以下かつ週所定労働時間が30時間未満の労働者)

表のように有給休暇は入社後6ヶ月で10日付与され、以後一年経過するごとに表の通り付与されます。
基本的に有給休暇の有効期限は2年間とされています(2019年2月現在)ので過去2年分の有給休暇が残っているという事になります。
有給日数が分かりましたら、有給を消化する期間にある公休日数を加算すれば退職日までに設けなければいけない期間が分かります。

例.有給日数が8日でその間の公休日数が2日の場合に1月15日から有給を全て消化して退職したい。 → 有給休暇を全て消化するのに必要な期間は10日。1月15日から有給を消化するので退職日は1月25日以降に設定する必要があります。

③会社が退職時の有給取得を拒否する例

“立つ鳥、跡を濁さず”の通り、できれば円満に退職したいと思うものです。
しかし、実際には以下のように有給休暇の取得を願い出たのに、会社側が拒否することもあります。

<時季変更権>
時季変更権とは、労働者が申請した有給休暇について、会社側がその日を変更できる権利のことを指します。
労働者が有給休暇を取得することにより、事業の正常な運営に支障をきたす場合には、使用者は時季変更権を行使することができるというものです。
ただし、使用者も労働者が有給取得できるよう配慮する義務はあるため、代わりに出勤できる人を確保したり、業務日の変更をしたりして、労働者に配慮をすることが前提となっています。
つまり使用者側も有給休暇を申請している労働者に対して、「繁忙期だからダメ」「人手不足だから無理」という理由だけで時期変更権は行使することはできません。
よって双方で調整し合うことが大事です。
 
<有給休暇届の未提出>
退職時の有給休暇の消化分について、退職者が「有給休暇届」を申請し忘れているために有給休暇ではない(欠勤扱い)とする場合があります。
この場合、口頭や書面でも有給休暇(有給消化)を請求していれば、使用者は原則としてその請求を認めなければならないため、会社側が「未提出」として拒否するのは無理があります。
しかしこういった問題が起こらないようにすることも大切です。
退職代行サービスを利用される方は事前に有給休暇届をもらっておき、退職届や返却物と共に有給休暇届を郵送するのがベストです。

<就業規則に記載されている>
就業規則に、「有給休暇を取得する1ヵ月前までに申請すること」と記載されている会社もあります。場合によっては、それを理由に上司が拒否してくるかもしれません。
しかし法律等で定めはなく、会社が民事的に規定しているに過ぎず、強制力はないとされています。
どうしても有給休暇が取得できなさそうであれば、有給休暇の買取を検討してもらうことも方法の一つです。
ただし会社にも有給休暇の買取をする義務まではないため、これについても双方が納得できるよう話し合うことが大事です。

④有給取得を拒否されてしまったら


もし上司から有給休暇の取得を拒否されてしまい、納得のいかない時は、まずは人事部に相談をすると良いかもしれません。
退職時は「有給を消化したい」「引継ぎしてもらいたい」という双方の主張がぶつかり、ヒートアップしてしまうこともあるので、第三者に入ってもらい冷静に話し合うことが大切です。
人事部にかけあっても有給の消化を拒否してきた場合には個人や退職代行業者だけではどうすることも出来ません。
労働局の「総合労働相談コーナー」に相談すると良いでしょう。
ただし、基本的には「双方で話し合いをして合意」を勧めてくるのが一般的です。
もし話の通じない会社であれば、早い段階で弁護士や合同労働組合(ユニオン)などに相談するのもよいでしょう。

⑤有給取得に希望の光! 働き方改革により有給取得の義務化へ


政府が目指す「多様な働き方を選択できる社会」の流れに合わせ、「働き方改革」が進められています。
その一つの例として、労働基準法改正により2019年4月から全ての使用者において「年5日の年次有給休暇の確実な取得」が義務付けられました(有給が10日以上付与される方が対象)これにより今後ますます有給が取得しやすくなることはまちがいありません。
また、法改正によって会社側にも罰則が与えられるようになります。
もし労働者が請求する時期に所定の年次有給休暇を与えなかった場合や、年5日の年次有給休暇を取得させなかった場合は、会社側に刑罰(30万円以下の罰金等)が課されることがあります。
厚生労働省でも有給休暇の期限について2年から5年に延ばそうという動きがあります。有給休暇は今後どんどん取得しやすくなりそうです。

最後に

有給休暇の取得は労働者の正当な権利である一方、使わなければその権利も消えてしまいます。
退職時には、勇気を出して有給消化の希望を出してみましょう。
退職代行サービスを利用される際に有給消化の希望がある場合には有給残日数と公休日の把握をしっかりとした上で退職届に希望の退職日を記載しましょう。
退職日までの日数が足りないと有給休暇を全て消化出来なくなったり、退職届を郵送し直すことになってしまうかもしれません。

[出典参照]
厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署『年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説』

ライター:キタガワ

1番最初のEXIT社員、労働組合でのボランティア活動を継続中。こちらのブラック研修の記事も要チェック

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