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傷病手当金の計算方法をご紹介!支給条件や支給調整・停止のケース、傷病手当との差まで詳しく解説!

傷病手当金の計算方法をご紹介!支給条件や支給調整・停止のケース、傷病手当との差まで詳しく解説!
この記事の監修者
新野 俊幸(「退職代行」専門家)
自身が会社を退職する際に苦しんだ経験から、日本初の退職代行サービス「EXIT」を2017年に開始。「退職で苦しむ人をなくしたい」という思いで、退職代行を日本に広め続けている。

病気やケガなどをきっかけに一時的に働けなくなった人に与えられるのが傷病手当金です。この傷病手当金は、今までの賃金に見合った金額が支給されます。一方で、いくらぐらいもらえるのだろうかと、傷病手当金をもらうかどうか検討している方にとっては不安に感じるところです。

傷病手当金は明確な計算方法があるので、それに今の収入を当てはめていけば簡単に支給額がわかります。問題は支給調整のケースや支給停止のケースです。傷病手当金に関する知識はできる限り知っておくのがいいでしょう。

本記事では傷病手当金の計算方法を中心に傷病手当金の支給条件や支給調整・停止のケースなどをご紹介していきます。

本記事を読むことで傷病手当金の計算方法を理解し、自分がいくら受け取ることができるかを知ることができます。

傷病手当金の計算方法は?

最初にご紹介するのは傷病手当金の計算方法についてです。おおよそいくらぐらいの傷病手当金を手にできるのか、計算方法などをご紹介します。

傷病手当金の計算式

傷病手当金の計算式は、「支給開始日以前の継続した12か月の各月の標準報酬月額を平均した金額÷30日×2/3」です。傷病手当金を受け取るまでの1年間における標準報酬月額を平均したものを30で割って、1日あたりの金額にしてから2/3を行います。

例えば、1日あたりの金額が9,000円だったとするならば、2/3をすることで6,000円となります。これを30日受け取るとなれば、合計18万円になります。以前は「休んだ日の標準報酬月額÷30日×2/3」という計算式でしたが、改正が行われた形です。

では、標準報酬月額とは何かですが、標準報酬月額は毎月の給料を区切りのいい形で区分し、健康保険の保険料などを算出する際に用いるものです。健康保険における標準報酬月額は全部で50等級に分かれています。

例えば、22等級だと標準報酬月額は30万円になります。この30万円は29万円から31万円の報酬月額の場合に該当します。ですので、29万円に近ければ近いほどお得になると言えるでしょう。

標準報酬月額に加算される報酬には基本給のほか、役職手当や勤務地手当、通勤手当などが含まれます。

傷病手当金の計算に用いられる標準報酬月額の決め方

次にご紹介するのは標準報酬月額の決め方についてです。先ほどもご紹介した通り、基本給や通勤手当などが計算の対象となりますが、実は標準報酬月額が2つ以上該当した場合、ややこしい計算になります。

12か月間の各月の標準報酬月額を平均するため、標準報酬月額が28万円だった時期と30万円だった時期があれば、28万円だった期間と30万円だった期間で合算した上で12で割ることになります。

一方、何らかの要因で「継続した12か月間の各月の標準報酬月額の平均」が取れず、6か月間や8か月間など短い期間にとどまるケースがあります。この場合は6か月なら6か月、8か月なら8か月で計算を行うか、前年度9月末における全被保険者の標準報酬月額の平均額で計算を行って、どちらか少ない金額で定めていくことになります。

基本給などを含めて等級のギリギリにいる場合、ちょっとした手当の違いで等級が前後する場合も考えられます。自分の標準報酬月額はいくらぐらいなのかを地道に計算してみるのもいいでしょう。

傷病手当金の計算ツールで確認を

ここまで計算式をご紹介してきましたが、とにかく計算が面倒であることは明らかです。この場合におすすめなのが傷病手当金の計算ツールで確認を行うことです。傷病手当金の計算ツールは標準報酬月額の平均額と休業日数などを入力するだけでおおよその支給額がわかります。

面倒な計算もすぐに行ってくれるので、手っ取り早く計算したい人におすすめです。そのためには標準報酬月額の平均額を算出することが重要なので、給与明細を引っ張り出してきて計算を行い、その上で計算ツールを活用していきましょう。

傷病手当金を計算する前に確かめておきたい支給条件

傷病手当金は計算ツールを使えばすぐに算出できますが、その前に確かめておきたいのが支給条件です。例えば、傷病手当金は国民健康保険に加入している人は利用できないシステムです。それ以外の支給条件をまとめました。

  • 業務以外の理由で生じたケガや病気である
  • 労務不能と判断されて仕事ができない
  • 待期期間を含んだ4日以上にわたって仕事を休んでいる
  • 休職中は給与を受け取っていない

これらをすべて満たすことで傷病手当金を手にすることができます。ここからは支給条件についてご紹介します。

業務以外の理由で生じたケガや病気である

傷病手当金は業務以外の理由でケガや病気になった場合にもらうことができます。仮に職務中にケガや病気になった場合は労災保険を活用することになります。労災保険に関しては給付基礎日額の80%が支給されるため、実は傷病手当金よりも多くもらえます。

ですので、明らかに職務中にケガをした、仕事が原因で病気になった場合は労災を適用した方が多くもらえると言えます。何を原因として働けなくなったのかは、給付額を大きく変える大事な要素となります。

労務不能と判断されて仕事ができない

傷病手当金は労務不能と判断され、仕事ができない状況において支給の対象となります。ですので、仕事ができる状態であれば傷病手当金は支給されません。誰が労務不能と判断するかは、医師の判断です。医師の意見書の項目があり、その項目において労務不能であることを書き込んでもらい、健康保険組合で審査します。

医師の判断は基本的に尊重されるため、休職の手続きに入る際に医師から診断書を受け取る時に今後のことを相談し、主治医として当面の間は書き続けてもらう形になるでしょう。

待期期間を含んだ4日以上にわたって仕事を休んでいる

傷病手当金は待期期間を含んだ4日間以上仕事を休み続けることでもらうことができます。待期期間は連続した3日間で、4日目以降から支給対象となります。その間、1日でも職場復帰すれば再び連続した3日間が待期期間として復活するため、注意が必要です。

傷病手当金自体は退職後も受け取ることができますが、最終出社日にうっかり仕事をしてしまい、給料が出てしまったら退職後の傷病手当金が受け取れなくなる可能性があるため、気を付けなければなりません。

休職中は給与を受け取っていない

休職中は会社から給与を1円も受け取らないことが理想的です。例えば、傷病手当金が1日1万円もらえるとした場合、会社から一部でも給与を受け取り、10万円受け取ったとすれば、10万円を差し引いた額、この場合は20万円しか受け取れません。

そのため、休職中はできるだけ給与を受け取らないのが大切です。ほとんどの会社は休職中の社員に何かしらの給与を支払おうとはしないので心配はいりませんが、傷病手当金を上回るような支払いになれば受け取れないので、一応気を付けるべき部分でしょう。

傷病手当金計算の複雑になる要因

傷病手当金の計算は、複数の要因によって影響を受ける複雑なプロセスです。以下では、これらの要因について詳しく見ていきます。

標準報酬日額の算出

傷病手当金計算の基礎となる標準報酬日額は、過去数ヶ月の平均給与に基づいて算出されます。この金額は、給与の変動に敏感に反応し、昇給やボーナス、減給などが直接影響します。したがって、給与の変化は、傷病手当金の支給額にも影響を及ぼす重要な要素です。

他の給付金との関係

傷病手当金を受け取る際には、他の給付金の受給状況も考慮する必要があります。例えば、労災保険から給付を受けている場合、その給付金は傷病手当金から控除されます。このように、他の給付金と傷病手当金との相互作用は、支給額を決定する際の重要な要素です。

就労不能期間の長さ

傷病手当金は、就労不能の期間にのみ支給されます。この期間が長いほど、支給される傷病手当金の総額も増加します。しかし、長期の就労不能が続く場合、支給額が減額されることもあるため、期間の長さは支給額に大きな影響を与えます。

健康保険組合の規定

健康保険組合によって、傷病手当金の計算方法や支給基準には違いがあります。同じ条件でも、組合によって支給額に差が出る可能性があります。したがって、所属する健康保険組合の規定を正確に理解することが、適切な傷病手当金の計算には不可欠です。

総合的な影響の理解

傷病手当金の計算は、これらの複数の要因を総合的に考慮することが求められます。給与の変動、他の給付金の受給、就労不能期間、健康保険組合の規定などが複合的に作用し、最終的な支給額に影響を及ぼします。これらの要素を理解し、適切に計算することで、正確な傷病手当金の支給額を把握することが可能となります。

以上の要因を踏まえた傷病手当金の計算は、個々の状況に応じた適切な支給額を確定するための重要なプロセスです。

給与の変動、他の給付金の受給、就労不能期間、健康保険組合の規定などが複合的に影響を与えるため、これらの要素を総合的に理解し、適切に考慮することが必要となります。

傷病手当金の計算にもかかわる支給調整・停止のケース

前の章で少しご紹介しましたが、状況によっては支給調整もしくは停止になるケースが出てきますので、詳しく見ていきましょう。

  • 休職中に給与を受け取った時
  • 障害厚生年金もしくは障害手当金を受ける時
  • 老齢退職年金を受ける時
  • 労災保険を活用できるとき
  • 出産手当金を受ける時

先ほどから出てきた休職中の給与受け取りや労災保険の活用のほか、出産手当金などのケースも支給調整もしくは停止になる可能性があります。ここからは支給調整もしくは停止になるケースを解説していきます。

休職中に給与を受け取った時

支給調整・停止のケースの1つ目は休職中に給与を受け取った時です。

休職中に関しては基本的に給与を支給しないケースがほとんどで、休職中は傷病手当金を利用してほしいとお願いされます。そもそも会社としても休んでいる社員に給与を支払わなくても何ら問題はないため、普通は給与の支払いは生じません。

一方、「私傷病休職」というのも存在します。私傷病休職は業務以外のことが原因で病気やケガになって休職する場合なので、言ってしまえば傷病手当金と同じようなものです。国家公務員の場合は病気休暇が用意され、連続90日までだと全額の給与保証が用意されています。

このようなケースでは傷病手当金が必要なく、むしろ傷病手当金よりも手厚さを感じさせます。

障害厚生年金もしくは障害手当金を受ける時

支給調整・停止のケースの2つ目は障害厚生年金もしくは障害手当金を受ける時です。

障害厚生年金は厚生年金に加入する人が病気やケガを理由に働けなくなる、もしくは働きにくくなる場合に支給されます。例えば、事故に巻き込まれて後遺症が残るような状態になってしまった場合は障害厚生年金を手にできます。

ちなみに障害年金と傷病手当金では傷病手当金の方が多いとされ、障害年金を受け取ったらその差額をもらう形になります。だからといって障害年金を受け取らない方がいいわけではありません。障害が残っていればいつまでも受給し続けられるため、受け取れるようなダメージを負ったら受け取るのがおすすめです。

老齢退職年金を受ける時

支給調整・停止のケースの3つ目は老齢退職年金を受ける時です。

老齢退職年金を支給する際には基本的に傷病手当金は支給されないことになっています。そのため、老齢退職年金を受け取るのか、それとも傷病手当金を受け取るのか、いずれかの判断を迫られることになるでしょう。

ただ例外も用意されており、老齢退職年金の額を360分の1をして、その額が傷病手当金よりも少なかった場合は差額が支給される形になります。その差は微々たるものですが、傷病手当金はしっかりと支給されるので安心です。

労災保険を活用できるとき

支給調整・停止のケースの4つ目は労災保険を活用できるときです。

労災保険における計算方法も先ほどご紹介した通り、労災保険を活用できる場合は労災保険の計算式で計算されるため、傷病手当金の出番がなくなります。当然ダブルで受け取るようなことはできません。

労災保険の方がもらえる金額が明らかに上なので、治療の際に医師に尋ねてみるのもいいでしょう。労災保険を利用するには労災である証拠なども必要なので、ハードルはそれなりに高めです。明らかに業務上のケガ、病気になったという場合に検討してみましょう。

出産手当金を受ける時

支給調整・停止のケースの5つ目は出産手当金を受ける時です。

出産をきっかけに仕事を休む場合には出産手当金が支給されます。出産手当金は出産日以前42日と出産日の翌日以降56日、およそ100日分の出産手当金が支給される形です。ちなみに計算式は傷病手当金とほとんど同じとなります。

一方で出産手当金と傷病手当金は出産手当金が優先されます。とはいえ出産手当金は出産の前後のみが対象となり、出産後に働けない状態になれば社会復帰ができるまで傷病手当金が支給されます。

傷病手当金と似ている傷病手当との差を計算!

傷病手当金と似た言葉に傷病手当があります。傷病手当金と傷病手当では漢字の「金」があるかないかの違いですが、その中身は漢字の違い以上に複雑な部分が見え隠れします。ここからは傷病手当金と傷病手当の差などをご紹介します。

そもそも傷病手当とは

傷病手当とは雇用保険から出される保険の1つで、失業している状況でケガや病気になった場合に支給されます。支給の要件はハローワークで休職の申し込みを行った後にケガや病気になった場合です。この時15日以上継続して仕事に就けない、労務不能と判断されることが条件です。

傷病手当は元々あった失業保険の給付日数から既に支給されている日数を差し引き、余った日数が受給日数の上限となります。受給日数の間は傷病手当として受け取れますが、それを過ぎてしまうと受け取ることはできません。

傷病手当金と傷病手当の違いは?

傷病手当金と傷病手当の大きな違いは支給される母体の違いにあります。傷病手当金の場合は健康保険から、傷病手当は雇用保険からそれぞれ給付されます。また、もらえるハードルも傷病手当金は休んでから連続4日以降なのに対し、傷病手当は15日以上となります。

何より決定的に違うのは受け取れる期間です。傷病手当金の場合、最長1年6か月まで受け取ることができます。一方で傷病手当は失業保険の基本日数のみなのでだいぶ大きな違いがみられます。

明らかに傷病手当金の方が多くもらえる

実際に傷病手当金と傷病手当でどちらが多くもらえるかですが、結論から言いますと、傷病手当金の方が多くもらえます。傷病手当金は最長1年6か月受け取れるため、その点でも多くもらえるほか、失業手当と傷病手当は同額なので、そこで比較しても傷病手当金の方が上になるでしょう。

一方で併給こそできませんが、傷病手当金をしっかりと受け取った後に失業保険を利用する手もできます。本来は退職日から1年以内に手続きをしないといけませんが、労務不能なので延長したいと手続きをすれば、一定期間は延長されます。がっつりと傷病手当金を受け取り続けた後に傷病手当金を受け取るのも1つの手です。

傷病手当金の計算が台無しになってしまう注意点とは

退職後も受け取れる傷病手当金ですが、せっかくの計算が台無しになってしまうのが、やはり退職日に出社してしまうことです。退職日に出勤してしまうとその時点で労務不能ではなくなってしまいます。継続して受け取り続けるには退職日当日は休むことが必須です。

この場合、有給休暇を取得して休むことは何ら問題がありません。そのため、退職日を迎える際には有給休暇の取得が必須となります。退職日以降にもらう場合も最初に受け取り始めてから断続的に1年半先までもらい続けられます。

その中でたった1日出勤しただけですべてが台無しになってしまいます。出社せざるを得ないような局面にならないよう、最大限気を付けていくことが求められます。

傷病手当金の計算をしてからでも間に合う退職代行の検討!

退職後も傷病手当金は受け取れるため、退職の検討を始めることも大事でしょう。退職代行サービスを使えば、業者が退職代行の通知を行ってくれるので、会社に罪悪感を感じながら退職を伝えずに済みます。

退職代行サービスには様々な種類があり、ただただ退職の申し出を伝えるだけというところもあれば、それ以外のサービスを用意してより便利に利用できるような形にしているところもあります。退職代行サービスごとのサービスの違いはチェックが必要です。

そして、値段の件などを踏まえ、できるだけ相場の範囲内で支払いが成立する退職代行サービスを探して、納得のいく形で退職ができるようなところを見つけて利用していきましょう。

退職代行サービス「EXIT」