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残業続きなら辞めてすぐに給付が受けられる!? 失業保険の裏ワザと注意点を社労士さんに聞いてみた

残業続きなら辞めてすぐに給付が受けられる!? 失業保険の裏ワザと注意点を社労士さんに聞いてみた

キャリアアップや過酷な労働環境から抜け出したいなど、退職理由はさまざまですが、いずれにしても退職には不安がつきものです。特に経済的な不安はすべての人に共通してあるものではないでしょうか。

そんな退職者たちのセーフティーネットとなってくれるのが、失業保険です。

受給金額や受給期間の長さ、手続きの難しさ、注意点、さらには知っておくと得する知識について、小池社会保険労務事務所の小池克昌氏にお話を伺いました。

「1年以上在籍していれば失業保険を受け取れる資格アリ」仕組みと手続き

社労士 小池克昌 失業保険

――雇用保険・失業保険とはどんな制度なのか、教えていただけますか?

小池:まず「失業保険」についてですが、失業者や失業訓練をする人のために、生活・雇用の安定と就職促進の観点から保険の給付がなされるものを指します。そのほかに、失業の予防や雇用の拡大、能力開発を目指した給付もあり、これらと失業保険を含めた雇用にまつわるあらゆる保障を「雇用保険」と呼んでいます。

――失業保険は雇用保険の一部ということですね。失業保険はどんな人が受け取れるのでしょうか?

小池:会社を辞める直前2年間のうち1年以上、雇用保険に入っていた方が受け取れます。たとえば、その会社で働き始めて1年未満の方は雇用保険に入っている期間も1年に満たないわけですから、失業保険の給付も受け取れません(注:会社都合による離職の場合、雇用保険の加入期間が1年未満でも給付あり)。

――雇用保険はどの会社でも加入しているものなんでしょうか?

小池:雇用保険に入らなければいけない場合というのは、「週に20時間以上、入社してから31日以上働く見込みのある人」を雇うときです。なので、アルバイトの方であっても要件を満たす場合には加入しなければいけません。

雇用保険に入っているかわからない場合は、給与明細を見て、雇用保険加入分のお金が差し引かれているかを確認してください。

――では、週5日フルタイムで働いている方のほとんどは加入しているはずですね。失業保険を受け取るには、どのような手続きが必要なのでしょうか?

小池:会社から離職票を受け取って、自分の住んでいるエリアを管轄する所定のハローワークに持参し、失業保険の申し込みをします。このときに失業保険を受給する資格があるかどうか、離職票に記載された離職理由が正しいかどうかの確認をするわけです。

その後に7日間の待機期間を経て、受給者説明会に参加します。以降は定められたかたちで求職活動をきちんとしていれば、給付が受け取れるのです。

会社からもらった離職票をハローワークに提出して、説明会や求職活動をきちんと行ってさえいれば問題ないので、手続き自体はそんなに難しいものではないと言えます。

離職理由によって「給付までの期間」と「受給期間の長さ」が異なる

社労士 小池克昌 失業保険

――失業保険の申し込みを済ませて7日経てば、すぐに給付が受けられるのでしょうか?

小池:離職した理由によって違います。たとえば、会社の倒産やリストラなど、やむを得ない事情で退職した場合には「会社都合」での退職となり、待機期間の7日を過ぎて、4週間後の初回失業認定日で、失業の認定が認められたら4週間分の給付金を受け取れます。

しかし、「自己都合」で退職した場合は、待機期間終了後、さらに3ヵ月間待ってからようやく失業認定がおこなわれ、給付されることになるのです。

――会社都合で辞めた方のほうが、待遇が圧倒的に良いですね。

▼自己都合退職

▼会社都合退職
失業保険

小池:そうですね。しかも、受給できる期間も会社都合で辞めた人のほうが長くなります。たとえば、自己都合で辞めた場合は全年齢共通で、勤続年数が10年未満で90日、20年までが120日ですが、会社都合で辞めた30歳未満の方で、勤続年数が5年以上10年未満の方は120日、10年以上20年未満の方は180日までと、受給期間も延びるんです。

――もしかして、受給金額も会社都合の方のほうが多くなりますか?

失業保険

小池:いえ、離職前の6ヵ月間の給料額の平均で決まるので、受給金額は離職理由に関係ないですね。それから、1日あたりの受給金額の上限が年齢別に決まっているので、どんなに稼いでいる人でも上限金額分までしか受け取れません。たとえば、29歳以下でしたら6,750円、30~44歳でも7,495円までと決まっています。

――そうなんですね。でも、会社都合で離職したほうが待遇が良いとなれば、会社が負担する金額も変わってくるんじゃないですか?

小池:それが変わらないんです。会社都合と自己都合では受給者が享受できる条件は違いますが、会社が支払う金額が変わるわけではありません。

労災を申請された場合は、会社が痛手を負う可能性はありますが、離職票の離職理由は経営に影響を及ぼさないので、事実を素直に申告したほうがいいと思います。

――なるほど。では、会社から受け取った離職票に書かれている離職理由が「本当は会社都合なのに自己都合だった」など、違った場合はどうしたらいいですか?

小池:ハローワークで異議申し立てができます。離職票を提出したときに離職理由について確認されるので、正しい理由を申告してください。ハローワークから直接、会社に確認を取ってくれます。

アルバイトをするなら1日4時間以上、週に20時間未満で

社労士 小池克昌 失業保険

――先ほど受給資格について伺いましたが、受給するにあたって気を付けておくべき“落とし穴”はありますか?

小池:意外と知らない人が多いのですが、雇用保険に入っていて週に20時間以上働いていても、1ヵ月のうちに11日以上働いていなければいけません。しかも、11日以上働いている月が12ヵ月以上ないとダメなんですね。

なので、たとえばパート勤めをしている方で「この月は7日間しか働かなかった」という月があったとしたら、その月は失業保険の要件上はノーカウントになり、累計12カ月分を切ると失業保険が受け取れなくなってしまうのです。

――受け取れるつもりでハローワークに行って、資格がないと言われるのはつらいですね……。ほかにも気を付けたほうがいいことはありますか?

小池:待期期間中のアルバイトについてですね。失業保険の申し込みをしてから待機期間の7日の間にアルバイトをすると受給資格を失ってしまいます。これは会社都合による退職であっても、自己都合による退職であっても同じです。

――なるほど。自己都合の方は受給されるまでに3ヵ月待たなければいけないんですが、その間もアルバイトしてはいけないのでしょうか?

小池:その間はアルバイトしても大丈夫です。ただし、「週に20日間以上、入社してから31日以上働く見込みのある人」という雇用保険加入の要件を満たしてしまうと、就職と同じ扱いになり、受給がストップしてしまうので注意です。

――あくまで給付金を補完するためのアルバイトでなくてはいけないんですね。アルバイトをするうえで、ほかにも気を付けておくべきことはありますか?

小池:失業給付受給中でも、一定条件(雇用保険加入の要件を満たさない)内でアルバイトはできます。1日4時間以上働いた場合(就労等)は、その日分はカウントされず、「先送り」になります。最終的には受け取れるのですが、受給が有効になる期間は受給が始まってから1年間なので、それを過ぎた分のお金はもらえなくなってしまいます。

――1日4時間未満の労働だと、通常通りの給付が受けられるのでしょうか?

小池:いえ、1日あたり4時間未満(内職等)の労働の場合は「調整」というかたちになり、減額される可能性が高くなります。

4時間未満のアルバイトに関する考え方としては、以下のルールに沿って計算されます。たとえばAがBより多い場合は差額が減額されて支給されますし、1日分のアルバイト収入が前職での賃金日額の80%を越えてしまう場合は支給がカットされてしまうんです。

失業保険

――せっかく働いたのに受給をカットされてしまうのは、何だかもったいない気がしますね。

小池:ですから、アルバイトをする場合は週20時間以内に抑えながら、1日あたり4時間以上働くようにして、受給される分の金額を先送りにしたほうが良いでしょうね。

ただし、繰り返しになりますが、先送りにした分の有効期限は支給開始から1年間なので、その期限を過ぎないように気をつけてください。

1ヵ月に100時間以上の残業で、会社都合での退職と同じ待遇に

社労士 小池克昌 失業保険

――受給の際に気を付けるべきことを中心に伺ってきましたが、逆に知っていると得する制度などはありますか?

小池:先ほど会社都合で離職するほうが自己都合で離職するよりも待遇が良くなるという話をしましたが、実はリストラや倒産以外の離職理由であっても、会社都合と同じ待遇を受けられる場合があるのです。

「特定理由離職者」という条件に当てはまる人のことなのですが、たとえば、配偶者の転勤の関係で通勤が困難になってしまった方や、心身を患ってしまった方、家族の病気などで家庭の事情が変わってしまった方なんかも、特定理由離職者に含まれます。

――配偶者の転勤や、家族の病気での退職も、特定理由離職者になるんですね。

小池:それから「特定理由離職者」とは別に、「特定受給資格者」というものもあります。たとえば、辞める前の6ヵ月間のうち、3ヵ月連続で45時間以上か1ヵ月間で100時間以上、もしくは2ヵ月で平均80時間以上の残業をしていた場合には「特定受給資格者」に相当し、会社都合での離職と同じ待遇を受けられるんです。

▼「特定受給資格者」と「特定理由離職者」の詳細は、ハローワークのWebサイトをご覧ください。
ハローワークインターネットサービス「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」

――残業の多いブラック企業に勤めていて退職を考える人も多い世の中ですから、これはすべての人に知っておいてほしい制度ですね。

小池:そうですね。そのほかに覚えておくと良い制度としては、雇用保険ではないですが、失業後に家賃補助を受けることができる、生活困窮者自立支援法に基づく「住居確保給付金」があります。離職してから2年未満で、ハローワークに求職の申し込みをしている人に限って、原則3ヵ月間家賃の一部負担をしてくれる制度です。

ほかにも失業期間中に適用できる制度はたくさんあるのですが、すべては説明してもらえないので、自分から積極的に聞くことが大切ですね。

まとめ「失業保険は権利、安心して受け取ろう」

  • 失業保険は会社を辞める直前2年間のうち1年以上、雇用保険に入っていた方が受け取れる。
  • 週に20時間以上働いていても、1ヵ月のうちに11日以上働いている月が12ヵ月ないと受給資格がない。
  • 受給期間中のアルバイトは週20時間未満、1日4時間以上がオススメ。
  • 「特定理由離職者」と「特定受給資格者」の項目をチェックしよう。
  • 情報は積極的に取りにいこう。

長時間労働の末の過労自殺やパワハラ、残業代の未払いなど。最近では、いわゆるブラック会社ではない大手企業でも、このような実態があるという報道を目にします。

失業保険の手続きから、お得な制度、注意点までを社労士さんに伺ってきました。意外な落とし穴や知らなかった制度など、目からウロコな情報がたくさんありましたね。

小池さん曰く、「失業保険の一部は自分で支払ったもの。受け取る権利がありますし、会社の負担が増えるわけでもないので、遠慮せずにきちんと受給できるようにしましょう」とのことでした。

失業保険についての知識をしっかり身につけて、安心して退職し、次のステップに進みましょう。

■お話を伺った方

小池克昌(こいけ よしまさ)さん

 社会保険労務士 
社会保険・労働保険の事務手続き業務をベースに、助成金の申請、給与計算、就業規則の作成や変更・年金相談など、人事・労務管理の業務を行っている。
小池社会保険労務士事務所 → http://www.koike-sharousi.jp/


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