やめ知識 やめ知識

退職代行から電話が来たら!会社側がすべき7つの対応方法を解説

退職代行から電話が来たら!会社側がすべき7つの対応方法を解説

最終更新日 2023年5月23日

この記事の監修者
近藤 陽介(弁護士)
2009年弁護士登録、2019年原宿に漣法律事務所を開設。 取扱分野は、個人では労働問題、男女問題、交通事故。 法人では美容、ファッション、IT関係等。漣法律事務所
この記事の監修者
新野 俊幸(「退職代行」専門家)
自身が会社を退職する際に苦しんだ経験から、日本初の退職代行サービス「EXIT」を2017年に開始。「退職で苦しむ人をなくしたい」という思いで、退職代行を日本に広め続けている。

退職代行サービスをご存じでしょうか。昨今、利用者が増えているサービスで、退職に関する手続きや交渉を代行してくれるものです。利用者が増加しているため、どんな企業であっても「社員が突然、退職代行を使って退職しようとしてきた」という事態が発生するかもしれません。

本記事では、退職代行から電話が来た際にどう対応すべきかについて、詳しく解説します。法律関連の知識も交えて解説しますので、会社の人事担当の方は、ぜひ参考にしてください。

退職代行は会社側からの拒否は基本的にできない

退職代行を利用されたら、原則として会社側からは拒否できません。なぜなら、労働者は自分の意思で退職することが認められているからです。期間の定めのない正社員は、条件を満たせば好きなタイミングで退職できると法律に明記されています。無理に退職を拒むと、法律違反になりかねないため、絶対にやめましょう。また、弁護士の退職代行だった場合は、退職や有休取得などに関する交渉にもしっかりと応じなくてはなりません。弁護士以外の退職代行だった場合でも、とにかく無理に会社の意向を通そうとせず、本人の意思を尊重するようにしてください。

有期雇用者は例外あり

原則として退職代行の拒否はできませんが、有期雇用者は例外です。有期雇用者は期間内に退職できない決まりとなっているので、退職代行を拒否できる可能性があります。ただし、有期雇用者であっても、1年以上働いている方や、やむを得ない理由がある方であれば、退職代行の利用が可能です。

【労働基準法137条】

期間の定めのある労働契約(一定の事業の完了に必要な期間を定めるものを除き、その期間が一年を超えるものに限る。)を締結した労働者(第十四条第一項各号に規定する労働者を除く。)は、労働基準法の一部を改正する法律(平成十五年法律第百四号)附則第三条に規定する措置が講じられるまでの間、民法第六百二十八条の規定にかかわらず、当該労働契約の期間の初日から一年を経過した日以後においては、その使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができる。

【引用:e-gov「労働基準法」】

【民法628条】

第六百二十八条 当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。

【引用:e-gov「民法」】

上記のように「1年以上働いている場合」や「やむを得ない理由がある場合」であれば、契約社員であっても、契約期間内の退職が可能です。しかし、上記のような理由がないのであれば、退職代行を拒否できる可能性があります。不当な形で契約社員に退職されそうになったら、まずは退職代行業者や弁護士に相談しましょう。

退職代行から連絡が来た場合に会社でできる7つの対応

退職代行から連絡が来たら、冷静かつ丁寧に対応しましょう。さまざまな不安が頭をよぎると思いますが、適切に対応しないと、会社の信用を大きく損ねる可能性もあります。もし退職代行と名乗る会社や弁護士から連絡があったら、以下の流れで対応をしてください。

【退職代行から連絡が来た場合に会社でできる7つの対応】

  • 本人の意思がどうかを確認する
  • 退職する従業員の詳細を確認する
  • 退職代行の回答書を作成する
  • 退職日・退職決定日までの従業員の扱いを決める
  • 退職理由について確認する
  • 引き継ぎ・貸与物について返還をする
  • 従業員の契約書・保険などの手続きをする

この後の項目では、退職代行から連絡が来た時の対応方法を詳しく解説します。今まさに退職代行から連絡がきて困っている方は、ぜひ以下の内容を参考にしてください。

本人の意思がどうかを確認する

まずは、本当に本人が退職したいのか確認をしましょう。本人確認に際しては、業者情報を確認するとともに、本人に退職願の提出を求めます。まず、退職代行には以下の3種類があります。

【退職代行の種類】

  • 一般の退職代行業者
  • 弁護士が行っている退職代行
  • 労働組合による退職代行

上記のうち、弁護士であれば違法性が低く交渉する権限もあるため、拒否するのは難しいと言えます。一般の代行業者や労働組合だった場合は、弁護士に相談をして、相手の違法性や権限の範囲について調べましょう。代行業者は詐欺や嫌がらせのケースも稀にあるためです。

そして、本人に対して意思確認を行うのも必須です。退職願や委任状を用いて、本人が本当に退職したいのか、そして本当に本人が退職代行を依頼したのかを確認してください。非常に珍しいケースではありますが、社員を装って退職代行を悪用する人もいます。業者が正常であっても、依頼主が本人でないケースも考えられますので、まずは冷静に業者と依頼主について確認をしてください。

退職する従業員の詳細を確認する

本人の意思で退職したいことが確認できたら、退職する従業員の詳細を確認しましょう。具体的には、契約書で雇用形態についての確認を行います。無期雇用の場合は、退職を申し出てから通常2週間で退職が可能です。有期雇用の場合、原則として契約期間が満了するまで勤務してもらう必要があります。

退職に際しては、勤続年数・出勤日数・職場環境なども重要です。有期雇用の場合、1年以上勤めているかどうかで、契約期間途中に退職できるかどうかが異なります。また、無期・有期に関わらず、職場環境に大きな問題があった場合も即日退職が可能です。さらに、勤続期間や出勤日数によって、有給の付与状況が変わってきます。このように、従業員がすぐ退職できるのか、有給を付与する必要があるのかを判断するために、従業員の詳細を確認しましょう。

【確認事項リスト】

  • 雇用形態(無期・有期)
  • (有期契約の場合は)契約期間
  • 勤続年数
  • 出勤日数(欠勤の割合)
  • 職場環境に関するヒアリング(パワハラ・セクハラ等がなかったか)

退職代行の回答書を作成する

本人の詳細が確認できたら、退職代行に対する回答書を作成しましょう。回答書は、代行業者に送るケースと、退職する従業員本人に送るケースが考えられます。いずれの場合も、以下の内容を記載してください。

【回答書に記載する内容】

  • 退職を認めるかどうか
  • 退職日の調整をどうするか
  • 引き継ぎ作業をどのように進めるか
  • 会社の連絡窓口はどこか(誰か)

上記のような内容を記載して、回答書を作成・送付します。なお、何らかのトラブルになった際に証拠として提出できるよう、回答書は控えを作成してください。以下で、回答書の例をご紹介します。

【回答書の例】

20〇〇年〇月〇日(右揃え)

〇〇殿

〇〇株式会社 人事部〇〇 印(右揃え)

退職の手続きについて(中央揃え)

 20〇〇年〇月〇日に、退職手続きを委任されたと言う株式会社〇〇より、貴殿の退職に関して連絡がありました。弊社にて退職代行業者と依頼主に関する確認を行い、社内で協議を行った結果、貴殿の退職を認めることになりましたのでご報告いたします。

 つきましては、20〇〇年〇月〇日〜20〇〇年〇月〇日の期間で、現在付与している有給休暇を取得していただき、20〇〇年〇月〇日をもって退職となります。退職に際して、本人の意思を確認する必要がありますので、退職日を明記した退職届を郵送にてご提出ください。なお、引き継ぎ作業の必要はございませんが、20〇〇年〇月〇日までに「貸与品」「弊社に関する書類や研修資料」「健康保険証」をご返却いただきますようお願いいたします。

 退職手続きに関して何かご不明点がございましたら、人事部〇〇(電話:〇〇-〇〇〇〇-〇〇〇〇)までご連絡ください。

以上(右揃え)

なお、本人の意思が確認できない状態なのであれば、無理に退職を認める必要はありません。むしろ、本人確認ができていない状態だと、後から「退職する意思はなかった」と言われてトラブルになる可能性があります。退職代行の依頼主に関する確認ができないのであれば、まずは回答書で本人確認をしたい旨を伝えるようにしてください。

退職日・退職決定日までの従業員の扱いを決める

回答書を作成するタイミングで、退職日や退職決定日までの従業員の扱いを決めましょう。退職日が決まるまでの間、本人が出勤を拒否する場合は、欠勤または有休取得の形で対応するのが一般的です。退職日が決まった後も、退職まで日があるのであれば、欠勤もしくは有休消化の形で対応します。注意しなくてはならないのが、欠勤日数です。もともと欠勤しがちの従業員だった場合、退職手続きによって欠勤日数が増えると、有給の取得条件を満たせなくなる可能性があります。本人が有給取得を希望している場合は、規定日数のうち8割以上は出勤してもらえるように、確認と調整が必要です。

退職理由について確認する

本人確認をするタイミングで、退職理由についても確認できると良いでしょう。健康上の理由なのか、職場環境に問題があったのかによって、対応は大きく異なります。健康上の理由であれば、会社に非はないケースがほとんどなので、退職者に寄り添って対応すれば問題ありません。しかし、職場環境に問題があったのであれば、周辺社員へのヒアリングや社内規定の改定など、トラブルへの対応が急務になります。場合によっては、トラブルの原因となった社員の処遇を検討する必要もあるでしょう。これ以上退職する社員を増やさないためにも、退職理由の確認と対応はできる限り早い段階で行ってください。

【理由リスト】

  • セクハラ・パワハラがあった
  • 事前説明と実際の業務内容が違った
  • 親族の事情で仕事を続けるのが困難になった
  • 健康上の理由で出社できなくなった

引き継ぎ・貸与物について返還をする

退職が決定したら、引き継ぎをどうするかを考えましょう。退職代行を利用する場合は、二度と出社しないケースも珍しくありません。退職日までに本人が出社しない場合は、業務関連の書類をすべて返却してもらったうえで、社内で協力して引き継ぎ作業を行うしか無いでしょう。

退職者に対しては、返却物の返還を求めます。回答書に記載しても構いませんし、代行業者を介して本人に伝える形でも問題ありません。特に書類関連は、大きなトラブルを招きかねませんので、漏れなく全て回収しましょう。

【貸付物リスト】

  • 業務関連の書類、社外秘文書
  • 研修資料
  • 顧客データが記載された書類
  • 健康保険証
  • 社員証
  • PCや携帯などの備品
  • 制服

従業員の契約書・保険などの手続きをする

退職が決定したら、社会保険の解約手続きや離職票の発行などを行います。保険の解約手続きを行わないと、退職した従業員が失業手当を受け取れなくなったり、年金の切り替えができなくなってしまうので注意しましょう。退職関連の手続きが完了したら、「退職証明書」「離職証明書(離職票)」「社会保険の資格喪失届」「雇用保険の資格喪失届」「源泉徴収票」を従業員に郵送します。離職票などは発行しないケースもありますが、保険の資格喪失届は必ず送付してください。

退職代行を使われた会社が注意すべき3つのポイント

社員が退職代行を使って退職をしようとしたら、慎重な対応が求められます。対応方法を誤ると、法律違反になってしまったり、会社に関する悪評が広まる可能性があるためです。適切な対応をするために、以下のようなポイントをおさえておきましょう。

【退職代行を使われた会社が注意すべき3つのポイント】

  • 退職希望者への圧力はかけない
  • 賠償損害請求は認められないことが多い
  • 有給取得の申し入れは受け入れる

上記3つのポイントをおさえておけば、退職代行を利用された際も、大きく対応を間違えることはありません。この後の項目で、退職代行を使われた場合の対応方法について詳しく解説しますので、参考にしてください。

退職希望者への圧力はかけない

退職希望者へ圧力をかけるのはやめましょう。無理に本人と連絡をとろうとしたり、退職を拒否したりすると、悪い噂が立ってしまう可能性があります。昨今は就職・転職サイトで会社ごとの評価が投稿されますが、場合によってはサイト内評価が下がり、就職・転職希望者が減少してしまう可能性もあるでしょう。また、SNSで悪い口コミが広がる可能性もあります。法律を遵守して退職するのであれば、会社が無理に引き留めることはできません。会社の評判を下げないためにも、退職希望者に対して圧力をかけるのは絶対にやめてください。

賠償損害請求は認められないことが多い

退職代行を利用して急に辞められた場合でも、損害賠償請求はできないことが多いです。「勝手に辞めるから業務に支障がでた」「トラブルに繋がり、損害が発生した」など、何か理由をつけて損害賠償請求をしようと考える人もいます。しかし、任意に退職することは法律で認められているので、損害賠償請求をするのは難しいのです。重要書類を持ち逃げし、他社に社外秘情報を漏らすといったトラブルでも発生しない限りは、退職者を相手に起訴を起こすのはやめたほうがよいでしょう。むしろ、職場内トラブルで退職した場合だと、逆に裁判を起こされる可能性もあります。不利な立場になるケースもあるので、無理に損害賠償請求をしようとするのはやめましょう。

有給取得の申し入れは受け入れる

原則として、有給取得の申し入れは受け付けるようにしましょう。条件を満たす場合であれば、契約社員であっても有給の取得が認められています。

【労働基準法第39条1項】

使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。

【引用:e-gov「労働基準法」】

上記のように、半年間継続して勤務している方で、労働日の8割以上出勤している方であれば、有給を付与しなくてはなりません。退職代行を使って辞めるからといって、有給の取得を拒否すれば、法律違反で訴えられてしまいます。急な退職や有給取得は、職場にとって負担になるかもしれませんが、法律で認められた権利です。拒否することなく、希望通りに有給を取得してもらいましょう。

まとめ

昨今は退職代行を利用する労働者も増えています。急に退職代行から連絡がきたら、会社としてはとても困惑するでしょう。しかし、職場では変わりなく働いていたように見えても、ストレスを溜め込んでいて、急に退職するケースもあるのです。退職代行から連絡がきた場合、基本的に退職は拒否できません。労働者は、条件を満たせばすぐに退職できると法律で定められているためです。無理に拒否すれば、法律違反になる可能性があり、会社に関する悪評が広まるリスクも高まります。急な退職だったとしても、冷静に対応し、双方納得できる着地点を見つけられるようにしましょう。

退職代行EXITに無料相談する