退職代行を使われた企業の反応例!対応の流れや正しい対処法、トラブル事例紹介

最終更新日 2023年5月26日
「退職代行を使われた企業はどう対応すればいい?」とお悩みの方もいるのではないでしょうか?
企業は従業員によって退職代行を使われた場合、基本的に拒否できません。従業員と無理に接触しようとしたり、安易に拒否し続けたりすると、トラブルに発展する可能性があります。
今回は、退職代行を従業員に使われた企業の方に向け、退職代行が使われた場合の反応例や対処法についてご紹介します。
本記事を読めば、退職代行を利用された側の対応の流れを把握し、トラブルを未然に防止できるでしょう。また後半では、退職代行を使われた側の間違った対応例や起こり得るトラブルについても解説しているので、ぜひ最後までご覧ください。
退職代行を従業員に使われた!企業は拒否できる?
退職代行を使われたからといって、基本的に退職の申し出を拒否することはできません。法律上、「労働者が退職時に直接職場で手続きをしなければならない」という規定は存在しないからです。
退職代行が使われた場合に拒否できない具体的な理由は、以下の通りです。
基本的に労働者の退職の意思は拒否できない
法律上、労働者が退職代行サービスを使う・使わないに関わらず、企業は退職を断れません。
民法627条では、雇用期間の定めがない限り、従業員はいつでも退職の申し入れができると明記されています。また、退職の意思を伝えた場合、2週間が経過することで雇用契約は終了します。
参考:民法627条
企業によっては、就業規則に「退職は1か月前までに申し出ること」のように、退職規定を設けている場合があるでしょう。
しかし、就業規則よりも民法の方が法的効力が強いため、基本的に「退職の意思表示から2週間経過すると雇用契約が終了する」ルールが優先されます。
労働者の退職の自由は法律によって保障されています。「後任が見つからない」「就業規則に違反している」などの理由で無理に引き止めると、トラブルに発展することもあるので注意しましょう。
有期雇用の場合は拒否できる可能性がある
有期雇用で雇われた従業員であれば、退職代行を使われた場合でも、退職を拒否できる可能性があります。
民法628条では、企業が雇用期間を定めている場合でも、「やむを得ない事由」であれば契約を解除できると定められています。
参考:民法628条
やむを得ない事由とは、病気や事故によるケガ、親の介護など、客観的にみて退職せざるを得ない状況のことです。
一方、正当な理由がなく明らかに従業員の過失であると認められる場合であれば、退職を拒否することができます。
退職代行を使われた企業の反応例と体験談
退職代行が使われた企業の反応例や体験談として、以下の例があげられます。
①「業者から連絡が来てショック」
退職代行業者から連絡が来て、部下から悩みを打ち明けられずにショックを受けるケースです。退職者と信頼関係が深ければ深いほど、退職代行を使われて間接的に退職を告げられると、ショックが大きいでしょう。
従業員が退職代行を利用する理由には、「上司との人間関係は問題ないけど、仕事の負担が大きい」といった可能性もあります。
そのため、部下との人間関係は問題なかったはずなのに、退職代行が使われた場合は、企業の労働環境などに原因がなかったかを見直すことで、再発防止につながります。
②「退職代行の防止に向け労働環境を改善したい」
退職代行が使われたことを受け止め、再発防止に向け労働環境を改善するといった意見もあります。
退職代行を利用された場合、悪質な辞め方でない限り、退職拒否や損害賠償の請求はみとめられません。また、裁判などのトラブルが起こると、会社にとっても事業に支障が出る可能性もあるでしょう。
無理な引き止めやトラブル対応に割く手間や時間を労働環境の改善に注ぐことで、企業としてもより良い職場環境づくりにつながります。
③「どう考えてもおかしい!非常識で迷惑」
退職代行を使うことを理解できないという意見もありますが、退職代行サービスに関する常識は時代の流れとともに変化しつつあります。サービスの認知度や利用者数は年々増加しており、依頼者の年齢層は20代が中心です。
実際にマイナビの調査によると、退職代行サービスの「利用経験あり+利用意向ありの割合」について、以下の結果が得られています。
年代 | 利用経験あり+利用意向ありの割合(%) | |
男性 | 女性 | |
20代 | 33.2 | 25.9 |
30代 | 34.3 | 17.3 |
40代 | 22.9 | 17.5 |
50代 | 20.1 | 12.7 |
男女ともに年代が低いほど、退職代行に対する抵抗が少ない傾向にあります。
当然、どの年代においても退職代行を理解できない方はいますが、サービスの普及が広がっている時点で、サービスの利用自体が非常識ではなくなりつつあるのです。
そのため、退職代行が使われたからといって、従業員を責め立てると、かえって世間から非難される可能性もあるでしょう。
退職代行を使われた場合の一般的な対処法
退職代行を使われた場合の一般的な対処法についてご紹介します。
- 業者の運営元と従業員本人からの委任状を確認する
- 従業員の雇用期間や有給休暇の残り日数を確認する
- 退職希望日をチェックし退職届を送付してもらう
- 退職届を受理し貸与品を返却してもらう
ここからは、上記4つの流れについて詳しく解説します。
1.業者の運営元と従業員本人からの委任状を確認する
退職代行が使われた場合、まずは運営元の情報や従業員本人からの委任状を確認することが重要です。
企業や従業員への嫌がらせを目的に退職代行業者を名乗り、勝手に退職手続きを進めようとする悪質なケースがあります。
そのため、退職代行業者から連絡が来た場合、運営元の種類や本当に存在するかを確認しましょう。
また、本人からの委任状だけでなく運転免許証や社会保険証のコピーなどが提示されれば、正当な依頼である可能性が高いです。
2.従業員の雇用期間や有給休暇の残り日数を確認する
退職代行業者の身元確認が済めば、雇用期間や有給休暇の残り日数をチェックします。
有期雇用の従業員は、退職を先延ばしにできる可能性がありますが、無期雇用の場合は退職を断れないでしょう。
また、労働者が有給休暇を消化する権利は、労働基準法39条によって保障されています。有給休暇の付与日数が10日以上ある場合、企業は最低でも5日を消化しなければなりません。
企業が有給休暇の取得を違法に拒否すれば、違反者1人につき30万円以下の罰金が課せられる場合があるので注意しましょう。
3.退職希望日をチェックし退職届を送付してもらう
従業員の雇用期間や有給休暇の確認が済めば、退職希望日をチェックし退職届を送付してもらいましょう。
退職希望日は解約の申し入れから2週間以降が原則です。ただ、退職希望日が申し入れから2週間以内であっても、企業が許可を出せば雇用契約を解除できます。
従業員の有給休暇が残っていない場合や、退職手続きをスムーズに進めたい場合は、早めの退職を許可することで企業側の業務負担が軽減されるでしょう。
4.退職届を受理し貸与品を返却してもらう
退職届の受け取り後は、正式に退職手続きを進めましょう。具体的な例として、以下の手続きがあげられます。
- 社会保険や雇用保険の脱退
- 所得税などの税金関連手続き
- 離職票の発行
また、物品を貸し出している場合は、必ず貸与品を返却してもらいましょう。企業の資料やデータ、PCや社用スマートフォンを貸与している場合、機密情報の漏洩や物品の横領などに発展するかもしれません。
退職代行業者を通して貸与品の返却を要請し、郵送してもらうことが可能です。
退職代行を使われた企業側の間違った対応例
退職代行を従業員に使われた企業が以下の対応をすると、トラブルに遭う可能性があります。
業者からの連絡を真に受けて交渉する
退職代行が使われた際、業者からの連絡を真に受け、従業員の本人確認をせずに退職手続きを進めることは避けましょう。
企業と労働者の退職に関する手続きは、法律事務が関わります。弁護士資格を保有しない業者が退職金や残業代の交渉を持ち出したり、本人からの依頼を証明できなかったりすれば、悪質な嫌がらせの可能性もあるでしょう。
また、従業員がトラブルに巻き込まれ、辞める気がないにも関わらず、第三者に退職を強制させられていることも否定できません。
そのため、退職代行の業務が違法ではないことや、本人からの依頼であることの確認が取れてから退職手続きを進めることが重要です。
従業員との直接やり取りを無理強いする
退職代行が使われ、本人と連絡が取れないからといって、執拗に電話やメールをしたり、直接会おうとする行為は控えた方が良いです。
基本的に、退職代行の依頼者は職場の人と対面を避けるためにサービスを利用しています。
SNSやメール、電話で連絡を取ろうとしても、基本的に応じられることはないでしょう。
そのため、退職代行が使われた場合は、退職希望者の意思を尊重して無理な干渉はせず、再発防止に向けた対策を練ることが重要です。
安易に有給休暇の申請を拒否する
退職代行が使われた場合、有給休暇の申請を安易に拒否してはいけません。
業者を通して間接的に退職の意思を伝えられると、納得のいかない場合もあるでしょう。また、有給休暇を利用されて突然退職されれば、後任探しや引き継ぎ業務などに負担がかかるため、拒否やタイミングをずらしたい場合もあるかもしれません。
一方、退職代行の利用自体は法律上は問題なく、有給休暇を取得させることは企業の義務でもあります。
退職代行が使われたからといって、有給消化を拒否すると法律違反をみなされる可能性があります。労働基準法第120条によると、違反者1人につき30万円の罰金が課せられる場合もあるので、退職希望者に明らかな問題がない限り、速やかに対応した方が良いでしょう。
退職代行を使われた企業のトラブル事例と対処法
退職代行が使われた企業のトラブル事例と対処法は、以下の通りです。
悪徳業者の非弁行為を認めてしまう
非弁行為とは、会社との交渉を含めた弁護士のみに許された行為を弁護士資格を保有しない者が違法に行うことです。
退職代行業者の運営元が弁護士でない民間業者である場合、退職金や有給休暇の交渉は認められません。退職時に非弁行為があった場合、交渉が無効となり、手続きのやり直しなどのトラブルに発展する可能性があるでしょう。
退職代行が使われた際、非弁行為の疑いがあれば、業者からの申し入れを保留し、弁護士に相談するのがおすすめです。
SNSから悪い噂が流れる
退職代行が使われた情報が漏れ、SNSなどで企業の悪い噂が流れる可能性があります。
例えば、従業員の退職を拒否した場合や、「出社しなければ損害賠償を請求する」と脅迫した場合です。訴訟は避けられたとしても、万が一自社が行った行為について投稿されてしまうと、一気に拡散され、自社のイメージが低下するリスクがあるでしょう。
そのため、退職代行が使われた場合は、正当な理由がない限り拒否することを避け、悪い噂が流れないよう迅速に対応することが重要です。
業務を回せなくなる
退職代行が使われた企業のよくあるトラブルは、担当者の突然退職により業務を回せなくなることです。
基本的に退職代行を利用されてしまうと、本人と連絡が取れなくなるため、業務の引き継ぎを要請することも難しくなります。突然退職が原因で会社が大きな実害を受ければ、退職者に対して損害賠償を請求できる場合もありますが、基本的に認められることはありません。
退職した者に引き継ぎの要請や訴訟する準備を進めるよりも、業務の後任を探すことに専念した方が良いでしょう。
退職代行が使われたら再発防止に向け労働環境を改善しよう!
今回は、退職代行を利用されると基本的に拒否できない理由や、実際に使われた側の反応例や対処法について詳しく解説しました。
労働者における退職の自由は、法律によって保障されているため、退職代行が使われても基本的に拒否することはできません。退職代行業者から連絡が来た場合は、以下の手順で速やかに対応することが大切です。
- 業者の運営元と本人からの委任状を確認する
- 退職希望者の雇用期間や有給休暇の残り日数を確認する
- 退職日をチェックし退職届を送付してもらう
- 退職届を受理し貸与品を返却してもらう
退職の申し入れを不当な理由で拒否しても、かえって手続きが長引き事業に支障をきたす可能性があります。従業員の退職を拒むことよりも、労働環境を改善し退職代行の再発防止を心がけることに注力するといいでしょう。