知っているようで以外と知らない?覚えておきたい労災の基礎知識
この記事では「労働災害とは何か」「具体的な事例」「労災保険の申請」について基本的な知識を解説していきます。
正規・非正規を問わず、「労働災害」は働いていれば誰にでも起こる可能性があります。労災に遭ったとき、正しい知識を身につけておくことでいざというときもきちんと補償を受けられるようにしておきましょう。
労働災害とは?
労働災害とは業務上の事由によって労働者が負傷、疾病、死亡することを指します。
「労働災害」はさらに「通勤災害」と「業務災害」というように区別をすることが出来ます。以下それぞれの違いについて具体的に見ていきましょう。
通勤災害とは?
通勤災害とは、労働者が通勤中に受ける災害(ケガ、事故、病気あるいは死亡)のことを指します。
・通勤中にケガをした
・通勤中に急な病気を発病してしまった
・通勤中に亡くなった
上記のようなケースはすべて通勤災害に該当します。
「通勤中の寄り道で事故に遭った場合」
しかし、通勤中に寄り道をして事故に遭った場合は、通勤災害と認められないこともあります。また、一度でも合理的な経路を逸れた場合、その間やその後に事故等に遭っても、通勤災害とは認められません。「出発から到着まで合理的な経路を通り、その間に災害に遭った場合のみに通勤災害と認められます」
「労災が認められる例外的な例」
・通勤中にトイレへ行った
・通勤経路上で軽食やジュースを買った
・通勤経路にあるガソリンスタンドで給油した
通勤災害は、自宅から仕事場または仕事場から別の仕事場などを合理的な経路で移動している間に起こる事故等のことを指します。というと「少しでも寄り道をしたら労災と認められないのか?」と疑問に思うかも知れません。結論からいうと、すべての寄り道が労災と認められないわけではありません。寄り道の程度や、やむを得ない事由がある場合は労災が例外的に認められるケースがあります。上記のような行動は基本的には労災として認められます。ただやはり個人で労災かどうかを判断するのはなかなか困難かと思います。個人で判断が出来ない場合は、とりあえず労働基準監督署等へ相談してみることが無難といえるでしょう。
業務災害とは?
業務災害とは、労働者が業務中に受ける災害(負傷、疾病、障害あるいは死亡)のことを指します。
業務災害も通勤災害における通勤中と同じように、「業務中に受けた災害かどうか?」が重要になります。労災が認められるには、以下2つの条件に該当する必要があります。
・業務起因性→業務と災害(ケガや病気)に客観的な因果関係が認められること
・業務遂行性→事業主の管理下で起こった災害であること
つまり「仕事中(遂行性)に仕事が原因でケガをした(起因性)」場合、業務災害に当てはまります。
「労災が認められる例」
・製造業務中に機械のトラブルで負傷した
・業務上での外出先で事故にあった
・会社主催のスポーツ大会でケガをした
業務災害は業務中に業務が原因で起こった災害のことを指します。業務中であればその場所は問わず、出張や社用で外出した際の事故等は業務災害に該当します。また強制参加させられた事業主主催のスポーツ大会等で事故に遭った場合等も、事業主の監督下で起こった事故やケガとして労災が認められることもあります。
また、近年ではうつ病や内臓疾患といった病気も業務災害として認められるケースが増えてきています。
・業務による過剰なストレスが原因と明らかに認められる精神疾患や過労・自殺
・長期間の業務でアスベストを吸い続けた結果発病した肺がんや、悪性中皮腫
・会社の給食により発病した食中毒
このような業務と因果関係が認められる疾病であれば業務災害に当てはまり、労災が認められるケースも増えてきています。
「労災が認められない例」
・昼休みや就業時間前後など、仕事場にはいるけど仕事をしていない時間帯
・酒気帯び状態で仕事をして、ケガをした
・故意に事故を起こしたりケガを負った場合
このような業務以外の原因が考えられる事由の場合、業務災害とは認められません。
「自然災害によって被害を受けた場合」
・台風で飛んできた物に当たってケガをした
・地震で倒壊した物の下敷きになって入院した
以上のようなケースは業務そのものが原因ではないため、業務災害とは認められません。ただし上記のケースが通勤中に起こった場合は、通勤災害に該当します。
労災保険の申請
では実際に労働災害に遭ってしまったとき、どのようにしたら良いのでしょうか?
労災保険の申請方法について、以下3つの手順にまとめてみました。
①請求書の入手
労働基準監督署あるいは厚生労働省のホームページから、通勤災害もしくは業務災害どちらか該当するほうの請求書を取得しましょう。
②必要事項の記入
取得した請求書に必要事項を記入しましょう。注意点として、請求書には事業主の署名欄があり、事業主が「サインをしない」等のトラブルが起こることが考えられます。事業主の署名は請求書の提出の際、必須の項目であるため故意に署名をしない等トラブルが起こった場合は労働基準監督署へ相談しましょう。また該当する労災に応じた添付書類が必要となる場合もあります。必要書類を忘れるなどの不備がないよう慎重に準備をしましょう。
③請求書の提出
請求書と労災に応じた必要書類の準備が完了したら、それらを労働基準監督署へ提出しましょう。
以上が労災の基本的な申請方法になります。ただし、請求書を提出すれば必ず労災が認められるというわけではありません。請求書を提出すると労働基準監督署によって請求書の内容に基づいた調査が行われます。そしてその結果、労災として認められるケースもあれば、認められないケースもあります。請求書提出以後は労働基準監督署のアドバイスに従って、対応を進めていくと良いでしょう。
「労災が認められない時の対処法」
・会社が労災を認めない
・労働基準監督署に申請を棄却された場合
など、そもそも申請書を提出できなかったり、申請書を提出しても労災と認められない状況に遭遇する可能性もあります。明らかに労災と考えられる場合、諦めるようなことはせず、毅然とした対処をすることが重要です。
「会社が労災を認めない」
会社が労災を認めない、いわゆる「労災隠し」をされた場合、速やかに労働基準監督署に相談しましょう。
「労働基準監督署に申請を棄却された場合」
労働基準監督署に申請を認められなかった場合は、各都道府県の「労働局」に相談しましょう。申請が棄却されて3ヶ月以内であれば、労働局で「審査請求」を行うことが出来ます。
必要書類を準備し、労働局に提出しましょう。
まとめ
労災保険は仕組みがよくわからなかったり、申請が大変だったりすることもあって進んでやりたいことではないかも知れません。この記事を読んで難しいと感じてしまった方も、労災に遭ったときはまず労働基準監督署に相談に行くことをオススメします。
労働者の当然の権利として、また自分自身が不利益を被らないためにも、労災に直面したときには毅然とした対処をすることが大切です。
ライター:くらげ
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